産業向けマシン・ビジョン・ソフトウエアを手掛ける独MVTec Software社のManaging DirectorのOlaf Munkelt氏に、「国際画像機器展2017」(12月6日~8日にパシフィコ横浜で開催)のリンクス(日本における販売代理店)のブース(ブース番号:1)で話を聞いた。同氏は、12月8日に出荷を開始する産業向けマシン・ビジョン・ライブラリー「HALCON」の最新版について語った(日本では12月12日にリリース)。

最新版製品のボックスを持つOlaf Munkelt氏。日経テクノロジーオンラインが撮影。
最新版製品のボックスを持つOlaf Munkelt氏。日経テクノロジーオンラインが撮影。
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 HALCONの最新版は「version 17.12 Progress Edition」である(MVTecのニュースリリースリンクスの紹介ページ)。最新版では既存版に対して新機能(後述する)が加わり、提供(ライセンス)形態が変わった。version 13までの既存製品は基本的に売り切り型で、2年に一度のバージョンアップを行っていた(これをSteady Editionと呼ぶ)。最新版からは、6カ月ごとに新機能を追加していく。また、開発用ライセンスは、売り切りではなく、随時更新のサブスクリプション形式になった。「とにかく早く新機能が欲しい、という顧客が増えてきた。そうした顧客の声に応えたのが、最新版のProgress Editionのライセンス形態である」(Munkelt氏)。

新たなライセンス形態を用意。MVTec/リンクスのイメージ。
新たなライセンス形態を用意。MVTec/リンクスのイメージ。
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 version 17.12 Progress Editionでは、複数の新機能が加わったが、その中の目玉はディープラーニング機能である。既存版では文字認識(OCR機能)にディープラーニングを使っていたが、今回、それを拡張して、汎用の画像認識機能として提供することにした。HALCONのディープラーニングは、ユーザー負荷を低減するために、MVTecがベースとなるCNN(Convolution Neural Network)モデルを開発・提供する。ユーザーは学習向けの画像データを入力していくことで、ユーザーに最適な画像分類(仕分け)用のCNNモデルに仕上げることができる。Caffeなどのツールを使う必要はない。ベースCNNモデルは2種類用意する。メモリー節約タイプと高精度タイプである。

ディープラーニングの適用対象例。MVTec/リンクスのイメージ。
ディープラーニングの適用対象例。MVTec/リンクスのイメージ。
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 学習・推論とも実行には米NVIDIA社のGPUが要る。これまでマシンビジョン処理に使っていたクラスのPCにNVIDIAのGPUボード(例えば、「GTX 1080」)を挿せば、ユーザーの手元で学習・推論とも行える。クラウドで学習する必要はないとのことだった。そう遠くない将来のバージョンでは、推論処理はGPUなしでも(すなわち、MPUだけでも)実行できるようにする予定である。これで、例えば、ユーザー向けに仕上げたCNNモデルを推論で利用できるPCの範囲が拡大する。