天然ゴムの試験管内合成
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天然ゴムの試験管内合成

 「天然ゴムを(世界で初めて)試験管内に合成した」(住友ゴム工業材料開発本部材料企画部部長の石田博一氏)――。住友ゴム工業は2016年12月2日、自動車用タイヤの性能向上に向けた研究成果を発表した。同社は天然ゴムを試験管内で合成することに成功、そのメカニズムを解明することで高付加価値なタイヤの開発を目指す。

 同社によると、天然ゴムはパラゴムノキの酵素からどのような作用を受けて合成されているのか分かっていない。酵素の評価方法には、植物から特定の酵素を無くして反応を調べる方法と、水中に反応物(天然ゴムになるモノマー)と酵素を混合して反応を調べる方法がある。しかし、前者の方法では植物内の反応を詳細に分析することができず、後者の方法では天然ゴムがそもそも水に溶けないという問題があった。

 そこで同社は天然ゴムが水中に存在できる膜を造りだした。膜の外側は親水性を、膜の内側は疎水性を有しており、表面に天然ゴムの合成に関わる酵素を組み込んでいる。同社は水中にこの膜とモノマーを入れ、膜外のモノマーが酵素と反応して膜内に天然ゴムが生成できるようにした。これにより、酵素がどのようにして天然ゴムを合成しているのか研究できるようになる。同社は合成メカニズムの解明を進めるとともに、天然ゴムの安定供給に向けた研究にも役立てていくという。