今回開発した人工光合成技術のイメージ
今回開発した人工光合成技術のイメージ
(図:昭和シェル石油のプレスリリースより)
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 昭和シェル石油は2016年12月5日、ガス拡散電極を用いた人工光合成技術を開発し、太陽光エネルギーだけで水と二酸化炭素から炭化水素など有用な資源へ直接変換することに成功したと発表した(ニュースリリース)。炭化水素への太陽光エネルギー変換効率は0.71%で、自然界の植物の光合成と同レベルという。

 日本では近年、太陽光をエネルギー源とする人工光合成技術によって二酸化炭素を有用物質に変換する研究が進んでいる。しかし、多くの研究機関では二酸化炭素を一旦水に溶かした状態で変換する方式を採用しているが、原料となる二酸化炭素が少量しか水に溶けないため変換が難しいという課題があった。

 同社は今回、ガス拡散電極を用いて気体の二酸化炭素を直接反応させることに成功した。ガス拡散電極は、水と気体状態の二酸化炭素を同時に触媒に接触する構造の電極で、燃料電池などに使われている。

 二酸化炭素が反応する電極には独自開発の触媒を使ったガス拡散電極を、光陽極には半導体光触媒とソーラーフロンティア製CIS薄膜太陽電池との積層構造を採用した電極を用いて、疑似太陽光の照射によりメタンを太陽光エネルギー変換効率0.61%、エチレンを同0.1%で合成することに成功した。

 今後は、2030年までに二酸化炭素から高効率で炭化水素やアルコールなどの有用物質を製造する技術を確立し、二酸化炭素の再利用による持続可能な社会の実現を目指す。今回の成果は、京都で2017年3月に開催される国際学会「2017 International Conference on Artificial Photosynthesis(ICARP2017)」で発表する予定。