「一番変わったのはトップとしての役割が非常に明確になったこと。責任を取ることが役割だ。私が出てくることでトヨタの現在、過去、未来への責任者として世の中が見てくれる。トヨタの責任者は今の社長なんだということを従業員にも示せた。その後のいろいろな仕事をやる中で、すごく楽になった」(豊田氏)。

 それまでは、たくさんの人の前で話すのが得意ではなく、逃げていたという。「メディアは大嫌いだった。先入観でものを言われる。素直に聞いてくれる人はいない。それなら説明責任を果たしても仕方がないと思っていた」(同氏)。

 しかしこの体験をきっかけに、「説明もしないのに分かってくれ」という姿勢は良くないと考え、自ら最前線に立って説明することを心がけるように自分自身が変化したという。

 次に取り上げたのが豊田氏が力を入れてきた「人づくり」だ。創業者の豊田喜一郎氏が創設した「豊田工科青年学校」がルーツの「トヨタ工業学園」を紹介。技が優秀かどうかよりも、道徳観念を持つことが大事で、ミスをしたらすぐにラインを止めるような正直で真面目な人材を育てることを重視しているという。