ドナルド・トランプ米次期大統領
ドナルド・トランプ米次期大統領
(出所: Gage Skidmore / photo on flickr CC by SA 2.0)
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 台湾の調査会社TrendForceの一部門であるEnergyTrendは11月9日、米大統領選挙の結果がグローバルの太陽光パネル市場における供給過剰の状態に拍車をかけるとの見通しを発表した。

 米国の太陽光発電に対する投資税額控除(ITC)は、米議会によって2022年12月まで延長されている。このため、2017年から2019年までは8~13GWの需要が続くとEnergyTrendは見込んでいる。

 米トランプ次期政権は、全体として再生可能エネルギーより化石燃料を優先するとみられる。

 EnergyTrendのアナリストであるCeleste Tsai氏は、「米国は太陽光発電システムへの優遇策を完全に中止する可能性が高い。このシナリオでは、ITCが切れる期限までに太陽光発電システムを設置しようと駆け込み需要が発生した後、米国内の需要は急速に冷え込む。このため、太陽光のグローバル市場における供給過剰という問題が悪化するだろう」と述べている。

 同氏は、米トランプ次期政権が掲げるエネルギー政策では再エネ開発が抜け落ちていることと、トランプ次期大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」政策が、結果的には中国政府の貿易慣行を標的とした保護主義的な施策になると指摘する。

 Tsai氏は、「米国では、ほとんどの太陽光関連企業がEPC(設計・調達・施工)サービス事業者や太陽光発電のシステム・インテグレーターだ。したがって、米国が貿易障壁を引き上げると、それら企業の事業コストが増加する。企業は増加したコストを太陽光発電システムの値上げという形で消費者に転嫁する。これによって、米国内の需要は抑制され、各地の太陽光発電産業には大きな圧力がかかるだろう」と見ている。

 中国の太陽光関連企業は、ほぼ製造業に集中している。これまで短期的には、それらの企業は製造工場を中国の外に移転することによって、米国の貿易障壁を回避していた。しかし、長期的にはトランプ次期政権の政策によって米国の太陽光市場は大幅に収縮し、グローバルの太陽光市場では供給過剰の問題が悪化すると見込む。

 「太陽光発電産業の参加者は、トランプ氏が大統領となった後の不確実性や試練に備える必要がある」と、EnergyTrendは総括している。