科学技術振興機構(JST)は11月24日、太陽光発電電力をより多く利用できる技術として、スマートメーター間の通信を利用し、分散的に電力使用量を調整する手法を開発したと発表した。
JSTの戦略的創造研究推進事業において、鳥取大学の櫻間一徳准教授らが開発した。天候による出力変動が大きい太陽光発電の大量導入時に、電力系統全体の需給バランスを維持できるような電力系統制御技術の構築を目指す。
再生可能エネルギー発電を多く導入した電力システムでは、日々の電力需給のバランスを調整する手法として、電力需要のピーク時などに需要家へ電力使用の抑制を促すデマンドレスポンス(需要応答)の手法が期待されている。
ただし、需要家全体の情報を集約し、大量のデータを処理する必要があることから、高性能なサーバーや高速な通信回線が不可欠とされている。
小規模な電力事業者やマイクログリッドの場合、これらの情報インフラの導入や運用は負担が大きい。
これに対し、今回の開発では、スマートメーターの通信ネットワークを活用し、スマートメーター同士が需要量や供給量といったデータを交換することで、分散的に価格やインセンティブ(報償)の調整量を決定するアルゴリズムを開発した。
これにより、大量のデータを集約・管理する必要がなくなった。サーバーなどの情報インフラの設置や運用の必要がなく、低コストで電力システムを管理できるとしている。
開発したアルゴリズムを使って、系統の一部における電力の需要と供給の差(需給インバランス)を解消する最適な調整量を得るためには、通信ネットワークが強連結と呼ばれる構造を持つ必要がある。そのために必要な通信中継設備の配置条件も明らかにした。
この手法を導入した場合、連系している複数のマイクログリッド内で、それぞれデマンドレスポンスが実現すると、マイクログリッド間で電力が自然に融通されるようになり、電力システムを全体で管理する必要がなくなるという。
シミュレーションでは、14系統のマイクログリッドを接続し、それぞれの系統には40~50程度の需要家と供給家を配置した。
各系統は、マイクログリッド内の需要家の総需要の30%を賄えるバックアップ電源を備え、需給インバランスをその範囲に抑えながら、できるだけ早く需給インバランスを解消する必要がある。万が一、一つのマイクログリッドの発電機が故障した時でも、需給バランスの要求を満せることを確認できた。