米テスラ社は17日、同社の株主が圧倒的多数でソーラーシティの買収を承認したと発表した。この株主投票では、両社の大株主であるイーロン・マスク氏ら以外の株主だけが議決に参加し、85%以上の株主がソーラーシティの買収に賛成したという。

 ソーラーシティの株主もテスラによる買収を承認したことで、今回の買収が確定し、手続きが近日中に完了すると見られる。テスラの公式発表では、株主への謝意を表明すると同時に、「両社が一体となって達成できる成果を世界に示すのが楽しみだ」と、今後の展開に自信を示している。

 一方で、米メディアの論調を見ると、テスラとソーラーシティの今後の事業展開に対して懸念や悲観的な見方も少なくない。その理由の一つは、政治環境の劇的な変化にある。

 民主党・オバマ政権では追い風が吹いていた太陽光や電気自動車(EV)にとって、来年1月に発足する共和党・トランプ次期政権が「強い逆風」になると予想されるためだ。

 ドナルド・トランプ次期大統領は「気候変動は作り話」との立場を公言し、はばからない(関連記事)。大統領選挙戦中も、石炭や石油、天然ガスなど化石燃料を主体としたエネルギー政策を公約し、それら産業の関係者からの票を多く獲得したとみられる。

 現時点では、2015年12月の時点で2020年までの延長が決まった太陽光発電に対する30%の投資税額控除(ITC)について、その打ち切りや廃止はないとされている。現に、現在ITCによる恩恵を受けている州の多くで、共和党の議員や関係者が同制度の成立や延長を働きかけたという経緯があるからだ。

 半面、オバマ政権下で立案され施行されつつあった「クリーンパワー計画(CPP)」について、トランプ次期大統領は廃止する方針を明確に打ち出している。また、米国政府としては30年ぶりとなる包括的な税制改革も行うとしている。

 太陽光や風力などの大量導入を前提とするCPPを廃止し大幅な税制改革を断行する一方で、共和党・トランプ次期政権はITCだけを本当に「聖域」として温存できるのか。