インドネシアで実証するマイクログリッドの概要
インドネシアで実証するマイクログリッドの概要
(出所:九電工)
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ハウステンボスのマイクログリッドが起点に
ハウステンボスのマイクログリッドが起点に
(出所:九電工)
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 九電工は11月21日、インドネシアのスンバ島にあるマイクログリッドにおいて、太陽光発電電力を最大限に活用するための実証事業を実施すると発表した。

 環境省の助成を活用し、2016~2018年度にわたり、太陽光発電と蓄電池システムを遠隔制御するエネルギー管理システム(EMS)を構築し、自律的かつ、安定的に太陽光発電電力を供給し、ディーゼル発電から太陽光発電への代替を促す。

 実証を通じて、気象や発電・蓄電などのデータを収集し、O&M(運用・保守)の手法も確立するとともに、導入コストの低下につなげる。

 今回の実証は、インドネシア研究技術省の技術評価応用庁(BPPT)との交流が契機となった。BPPTの長官が2015年10月、ハウステンボス・技術センター(長崎県佐世保市)と九電工が構築した再エネ主体のマイクログリッド(関連ニュース)を視察し、インドネシアへの技術導入を要望したという。

 実証の舞台となるスンバ島は、インドネシア東部にある。同島は、東部と西部に別々のマイクログリッドが構築されている。このうち、西側の設備で検証する。スンバ島は、2025年に再エネで消費電力の100%を賄う目標を掲げているほか、インドネシア政府が再エネ導入のモデル地域に位置付けている。

 マイクログリッドは、BPPTが開発・運用している。系統の最大需要は約8.3MWで、電源は出力約2MWの小水力発電所のほかは、ディーゼル発電機となっている。

 すでに出力約400kWの太陽光発電システムも導入されているものの、天候変化に伴う出力変動の吸収が難しく、日中に最大80kWh程度しか活用していない状況という。

 既存の太陽光発電設備は、約4年前に導入され、レドックスフロー電池を併設するなど、当時としては先端的なシステムだった。しかし、蓄電池を活用したEMSによる需給制御が不十分で、電力品質を維持した上での太陽光発電の利用に限界があった。

 今回の実証プロジェクトでは、この太陽光発電の出力変動を蓄電池の充放電制御で平滑化することで、系統への負荷を軽減しつつ、最大限に活用し、日中のディーゼルによる発電量を削減する。

 蓄電システムには、コストを優先して鉛蓄電池を採用した。出力1152kW・容量200kWhとなる。鉛蓄電池は、耐用年数に課題があるため、今回の実証では、蓄電池メーカーと協力し、充放電の回数を減らす新たな手法を導入する。これにより耐用年数を従来品に比べて約2倍となる約10年間に延ばしたという。

 2016年度内に設計を完了し、2017年度に現地に輸送・施工する。新たに導入する鉛蓄電池システムの施工は秋ごろを見込む。2018年度に遠隔制御を含めたO&Mの手法を確立する。

 九電工にとって、インドネシアでの再エネ関連の実証プロジェクトは初めてとなる。設備の施工やO&Mは、ジャカルタに本拠を置く電気工事会社と連携するという。

 同社では、今回の成果を踏まえ、インドネシアの他島での再エネ主体のマイクログリッド事業の展開も視野に入れている。現在のインドネシアの電力網で稼働している約4600台のディーゼル発電機のうち、10%以上の削減に貢献したいとしている。