富士通研究所は、人工光合成向けに開発した明反応電極(アノード電極)のデモンストレーションを実施した。効率を従来比で100倍に高めた電極で、同社はこの電極に関して2016年11月7日に報道発表している(日経テクノロジーオンライン関連記事)。

 人工光合成では、光と水(H2O)、二酸化炭素(CO2)から、酸素(O2)と有機エネルギー(ギ酸(CH2O2)など)が生成される。水に浸けた明反応電極側では、光が当たると、酸素、プロトン(H)、および電子が発生する。一方、暗反応電極では、有機エネルギーが発生する。発生する有機エネルギーは、暗反応電極側に入れる物質によって変わる。

今回の人工光合成のシステム図 富士通研のスライド。
今回の人工光合成のシステム図 富士通研のスライド。
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 今回のデモンストレーションでは、二酸化炭素を入れていないため、光を当てると、暗反応電極側では水素(H2)の気泡が、明反応電極側では酸素の気泡が勢いよく発生した。気泡が勢いよく発生したのは、同社が開発した高効率の明反応電極のおかげである。この電極によって酸素の発生効率が100倍以上に向上したという。同社は暗電極側の開発も進めている。すなわち、反応効率を上げられる触媒の開発を進めており、近い将来に発表の予定だという。

強い光を当てた状態 勢いよく気泡が発生している。左側が明反応電極で酸素が発生。右側が暗反応電極で水素が発生(∵二酸化炭素を入れていないため)。日経エレクトロニクスが撮影。
強い光を当てた状態 勢いよく気泡が発生している。左側が明反応電極で酸素が発生。右側が暗反応電極で水素が発生(∵二酸化炭素を入れていないため)。日経エレクトロニクスが撮影。
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室内の環境光が当たった状態 気泡はあまり発生しない。日経エレクトロニクスが撮影。
室内の環境光が当たった状態 気泡はあまり発生しない。日経エレクトロニクスが撮影。
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