フレキ基板に受動素子を形成する技術を応用
今回、明反応電極の効率を改善できたのは、電極基板への光励起材料の堆積方法を工夫したからである。すなわち、同社が以前に開発した、ナノパーティクルデポジション(NPD)と呼ぶ薄膜形成プロセス技術を応用した。NPDは、フレキシブル基板に受動素子を低温で直接形成するための技術で、高速コンピューター向けに開発されたという。
同社によれば、大学などが開発する明反応電極では、光励起材料の粉末をそのまま電極基板に堆積していた。一方、NPDでは、粉末の粒子をへき開させてから基板に堆積させる。これによって表面積が大きな膜構造ができ、光電流値を大きくすることを可能にした。
また、プロセス条件を最適化することで、構造に歪を与えた。これによって、光励起材料のバンドギャップが小さくなり、従来は紫外域でしか電子が励起しなかったのが、可視光域や赤外域でも電子が励起するようになった。以上の2つ、すなわち、へき開、および歪の導入によって、光励起材料の粉末を堆積する従来手法に比べて、100倍大きな光電流や100倍多い酸素を発生できるようになったという。
なお、同社は今回の開発に当たって、東京大学の幾原研究室と一部を共同で行った。また、今回の技術の詳細が、英国の科学誌Scientific Reports(オンライン版)に2016年10月19日付けで掲載された。