ドイツVolkswagen(VW)社が、ガソリンエンジンの開発方針を転換する。2016年11月10日、7代目「ゴルフ」を大幅に改良すると発表した。ガソリンエンジン車には、排気量を現行の1.4Lから1.5Lに増やした「EA211 TSI evo」を搭載する(関連記事)。同社はこれまで、エンジンの排気量を減らす「ダウンサイジング」を主導し、世界の自動車メーカーを追随させてきた。新エンジンで排気量を増やす方針に変えることは、VW社の金看板と言える戦略を断念したと言える。

 2012年に7代目のゴルフを発表して以来、4年ぶりの大きな改良となる。車体は現行車とほぼ同じだが、ガソリンエンジンに加えて情報系装置や安全機能などを刷新する。ゴルフの全車種が対象で、2ドア車と4ドア車、ワゴン「Variant」、高性能車「GTI」、プラグインハイブリッド車「GTE」を改良する。まずは欧州で発売し、その後で米国に導入する。販売価格は公表していない。

[画像のクリックで拡大表示]

 VW社がエンジン開発の方針を翻したのは、実用燃費性能が低いというダウンサイジングの弱点を解消したかったからだ。排気量を小さくし、出力低下を過給器で補うダウンサイジングは、モード燃費試験が重視する低負荷域の摩擦損失を減らせる。一方、ユーザーがよく使う高負荷域の熱効率が低い欠点を抱えていた。VW社はTSI evoで排気量を増やし、エンジンの高効率域をユーザーの実用域に近づけた。

 VW社が実用燃費に着目するのは、欧州で新しい燃費試験モード「WLTC(Worldwide Light-duty Test Cycles)」が2017年に始まるため。WLTCは現行の「NEDC(New European Driving Cycle)」に比べて、モード燃費と実用燃費を近づける狙いで高負荷域を多く使う。ダウンサイジングエンジンの弱点を見過ごせば、商品力を落としかねない。