太陽光発電の余剰電力で水素を貯め、地域全体で高効率に使う
太陽光発電の余剰電力で水素を貯め、地域全体で高効率に使う
(出所:竹中工務店)
[画像のクリックで拡大表示]

 竹中工務店は10月31日、東京本店が立地する江東区新砂エリアにおいて、水素エネルギー活用技術の実証を開始すると発表した。

 同社が構想している「竹中脱炭素モデルタウン」の構築に向けた中核技術の一つで、すでに着手しているVPP(バーチャルパワープラント)に続く、取り組みの第2段となる。

 同モデルタウンの構想は、省エネ・蓄エネ・創エネのシステムを最適に組み合わせ、複数棟・異種エネルギー設備・機器を1棟の建物のように統合制御した上、個別の建物が備えるさまざまな設備を高効率に活用して建物の消費エネルギーを最小化し、緑化システムや雨水活用技術も盛り込んで実現する。

 今回の水素エネルギー活用技術では、新砂エリアにある同社関連の建物「TAK新砂ビル」の敷地内において、太陽光発電電力を使った水素の製造・貯蔵から、その利用に至るまでの一連のシステムを構築し、建物や地域で高効率に活用することを実証する。

 既存の建物に、一連の水素活用システムを構築することで、水素の取り扱いに関する設計・施工の知見を蓄積するとともに、実際に水素を効率的に活用する際の制御ノウハウを蓄積して、統合的なエネルギーマネジメントシステムとして確立する。

 水素の貯蔵を、蓄熱や蓄電といった従来の蓄エネルギーシステムと同等と扱い、マネジメントの幅を広げるとしている。

 今回導入する各システムは、TAK新砂ビルにおいて稼働中のエネルギーマネジメントシステム(EMS)に連係する。水素でつくられた電力は、このEMS経由で同ビルに供給し、一連のシステムは、このEMSで制御して高効率に運転する。

 例えば、太陽光発電の余剰電力を見極め、最適なタイミングで水素を製造し貯蔵する。発電電力を直接利用する場合、蓄電池に充電する場合に加え、水素で貯蔵する場合の効果を検証する。

 また、燃料電池の排熱利用として、実際の建物で必要になるさまざまな熱の用途を踏まえて、地域全体で高効率化を図るシステムを構築し、効果を検証する。水素燃料電池に加え、都市ガス改質型燃料電池も採用し、トータルにマネジメントする効果を検証する。燃料電池の電力を直流のままEMSに送電、活用することで、変換ロスをなくしたシステムも構築し、効果を検証する。

 2030年には、10万m2の街区となるモデルタウンにおいて、今回構築する水素を活用したEMSなどにより、CO2排出量を40~60%削減することを見込んでいる。