日立製作所は2017年11月6日、糖尿病治療薬の効果を予測し、比較する技術を開発したことを発表した。米国のユタ大学(University of Utah)が有する糖尿病患者の電子カルテデータを機械学習を活用して解析することで実現する。

 患者への投薬開始から90日後の時点で、HbA1c値の低減目標(治療目標)を達成できる確率を、薬の種類別に計算し、予測することにより、患者にとって最も治療効果が高いと見込まれる薬の選定を支援できるという。今後、ユタ大学と協力して実用化に向けた共同研究を行うとともに、個人情報保護法制の順守や医療に関わる法令に基づき適切な対策などを検討していく。

 糖尿病治療薬ごとの効果予測、比較する技術の開発にあたって、ユタ大学が持つ匿名化された約9000症例の糖尿病患者の電子カルテデータのうち、約6800症例のデータを元に、薬の種類・量・投与期間・体重・検査値の推移などを、ユタ大学の医師、薬剤師と日立の知見を活用して時系列的に解析。得られたさまざまな情報を機械学習の技術を用いて分析することで、HbA1c値を低減できる確率を、患者ごと、薬の種類ごとに予測可能なモデルを構築した。

 この技術を用いることで、米国において標準的な通院間隔とされる投薬開始90日後の治療結果を薬ごとに予測、比較可能となるため、患者の特徴や状態に合わせた最適な薬の選択・判断を支援できる。今回、ユタ大学の持つ残りの約2200症例の糖尿病患者データに適用してシミュレーションしたところ、90日後の糖尿病の治療結果を高精度に予測できることを確認したという。

 米国における糖尿病患者は2310万人にのぼり、65歳以上の4人に1人は糖尿病と診断されている。しかし、糖尿病は、数カ月から数年以上にわたり患者の状態に合わせて薬の種類や量、組み合わせを調整する必要があるため、さまざまな投薬方法が存在する。