90%以上の病院がクラウドサービスに抵抗感がない一方で、セキュリティーや他システムとの連携が課題に――。介護・医療の情報サービスを提供するエス・エム・エスが実施した「第4回 医療関連ICT実態調査アンケート」から、こうした考えが判明した。

 アンケートは、同社が運営する病院事務長向け経営情報サイト「じむコム」内で、病床数20床以上の医療機関に勤務する事務長を対象に2016年7月21日~8月14日の期間で実施。108人から有効回答を得た。

 医療関連ICTシステム導入・検討状況の調査では、導入済みシステムは「医事会計」「自院ホームページ」「画像管理」「栄養・給食管理」が上位を占め、50%以上の医療機関が運用。新規導入を検討しているシステムの上位は、「電子カルテ」「オーダリング」「看護業務支援」となり、特に電子カルテは導入率よりも導入検討率が上回り、 導入意欲が高いことがわかった。

 また、地域包括ケアシステムの実現に向けて必要になってくると考えられる「地域医療連携支援」と「在宅医療連携支援」関連のシステムは、まだほとんど導入されていないのが現状。「地域医療連携支援」は新規導入を検討している医療機関は10.2%あるが、「在宅医療連携支援」については新規導入の検討率も低い。

図1 医療関連ICTシステム導入状況及び新規導入・切り替え検討状況
図1 医療関連ICTシステム導入状況及び新規導入・切り替え検討状況
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「他院からの情報収集」を参考に

 医療関連ICTシステムの導入・運用予算については、年間の導入予算・運用予算ともに回答数の8割が1000万円未満だった。「一般的に病院向けシステムは専門性が高いため価格競争が起こりにくいと言われているが、病院側のシステムに割くことのできる予算が少ないため、 最低限必要なシステム以外については、普及が進みにくい構造になっていると考えられる」と、じむコムは分析している。

図2 医療関連ICTシステムの導入・運用予算
図2 医療関連ICTシステムの導入・運用予算
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 また、医療関連ICTシステムに関する情報収集は、「他院からの情報収集」(56.5%)、「インターネット」(53.7%)、「ベンダーに直接問い合わせて」(52.8%)、「営業訪問を受けて」(50.0%)が上位を占める。DMなどはあまり参考にされず、他院からの情報収集が最も多いことから、利用者のリアルな意見を聞きたいという需要が高い。