ソフトバンクの馬場一・執行役員本部長
ソフトバンクの馬場一・執行役員本部長
(出所:日経BP)
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 ソフトバンクは10月3日、固定価格買取制度(FIT)による再生可能エネルギーを活用した電力プラン「FITでんきプラン(再生可能エネルギー)」のうち、東京電力エリアの電力量料金を現行より1%以上引き下げると発表した。その背景やFITでんきプランの状況などに関して、ソフトバンクの馬場一・執行役員本部長に聞いた。


――「FITでんきプラン」を東京電力エリアで値下げしたのは、契約者が伸び悩んでいるためか。

馬場 「FITでんきプラン」は、北海道エリアでは、北海道電力の「従量電灯B/C」に比べて電力量料金単価を1%安く設定していた。今回の東電エリアの値下げで、北海道エリアと同じような料金設定になった。

 「FITでんきプラン」は、もともと環境意識の高い消費者を対象にしており、料金の安さをアピールして契約者を増やすという商品ではない。料金プランとして、消費者にとってより分かりやすくしたかった。

――これまでの契約者は、想定していた水準に達しているか。

馬場 契約者の数は公表できないが、正直言って、満足できる水準ではない。「ソフトバンクでんき」には、東京電力と提携してスマートフォンなどとのセットで割安感を全面に打ち出したプランと、SBエナジーと提携して再エネ(FIT電気)を約60%活用するプランの2つがあるが、ほとんどの消費者は、経済メリットのより大きいプランを選択するのが実体だ。

――電源構成の計画値として公表した「再エネ(FIT電気)比率60%」は、達成できそうか。太陽光だけで、一般家庭の需要ロードの60%を賄うのは簡単ではない。

馬場 「再エネ比率60%」は概ね達成できている。確かに夕方から夜にも需要の多い一般家庭の需要ロードに応えて、再エネ比率60%を達成するのは、太陽光だけでは難しい。ホームページなどでは、調達先の再エネ電源のうち、SBエナジーの運営するメガソーラー(大規模太陽光発電所)しか公開していないが、バイオマス発電所からも調達している。

 バイオマス発電の活用を隠しているわけではないが、調達戦略は、電力小売事業にとって最大のノウハウで、機密事項でもあり、具体的な調達先の公表は控えている。

――般住宅など低圧需用家向けが対象の場合、契約規模が小さい段階では、需給バランスの維持が難しくインバランスのリスクが高くなる。

馬場 需給管理は、大手新電力のバランシンググループに属さず、単独でバランス業務を行っている。いまのところ、インバランスのペナルティコストは、事業性を圧迫するほどではない。概ね順調に需給バランスを達成している。

――北海道エリアと関東エリアには、送電容量に制限の多い地域間連系線(北海道・本州間連系設備)があり、再エネ電気を柔軟に融通し合うには限界もある。

馬場 現在、北海道と本州では、別々に需給バランスを管理している。調達先のバイオマス発電は本州側にあるので、実体的に北海道エリアの再エネ比率は、60%より低くなっている。ただ、電源構成の開示は、全サービス地域を合わせた数値になる。逆に言えば、東電エリアでは、再エネ比率60%をかなり超えた高い比率になっている。

――「再エネ比率60%」の電気といっても、需要家にとっては、火力発電の電気とまったく同じなので、その意義などを実感できない面もある。

馬場 実際にそうした声も聞くので、現在、「FITでんきプラン」の顧客に、再エネ設備などの絵葉書を送る計画を進めている。はがきに、手書きで感謝の気持ちを記したり、簡単な記念品を送ることも検討している。