お薬カレンダーに特化した一包化装置「一包奉仕」
お薬カレンダーに特化した一包化装置「一包奉仕」
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樹脂製トレーと用紙を貼り合わせてお薬カレンダーにする
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 薬のシートを投入するだけで、1回分の服用量ごとにパッケージした「お薬カレンダー」を自動で作製――。そんな調剤薬局向けの装置が、異業種連携のオープンイノベーションによって誕生した。高齢化などによって高まる「一包化」需要の取り込みを目指す。

 装置の名称は「一包奉仕」。鉄鋼関係の事業を多角的に展開する三島光産(本社北九州市)、調剤薬局向けシステムを手掛けるWindy(本社福岡市)、自動車部品メーカーなどから成るグループが開発したものだ。このほど、「第49回日本薬剤師会学術大会」(2016年10月9、10日、名古屋国際会議場など)で披露された。

 一包奉仕では、患者1人が1週間に飲むさまざまな種類の薬剤を、1回分の服用量ごとに小分けしたお薬カレンダーを自動で作製できる。具体的には、錠剤やカプセルが入ったPTP(Press Through Pack)シートを人がスロットに投入すると、装置が自動で必要な数だけ薬剤をPTPシートから取り出し(除包)、X-Yテーブルを用いてお薬カレンダーとなる樹脂製トレーの所定の凹部に薬剤を供給する(分包)。その後、供給した薬剤の数が正しいことを画像検査で確認してから、あらかじめ患者名や服用タイミングといった必要事項を印字しておいた用紙をトレーに貼り合わせて封止する(一包化)。トレーや用紙には切り込みが入っており、服用時に手で簡単に切り離せるようになっている。

 装置には標準で8個のスロットを備えている。標準のスロットは2列のPTPシートにのみ対応しているが、オプションとして3列のPTPシートにも対応したスロットを最大4個まで増設できる。トレーや用紙は、藤森工業が開発した。

 患者の処方箋を扱うシステム(レセコン)と連動させることが可能なので、手作業によるミスが起きにくい上、トレーサビリティーを確保できるという特徴がある。高齢化によって個人の患者や介護施設向けに一包化の需要が高まっているものの、薬剤師にとって一包化作業の負担が重かった。一包化作業を自動化した既存の装置には、「高価」「袋に入った状態で監査しなければならない」「音が大きい」などの点があった。

 今後は、2017年1月から東海地区で調剤薬局チェーンを展開するトーカイメディカル(本社愛知県春日井市)において実証実験を進め、同年4月の発売を目指す。2016年10月26~28日に東京ビッグサイトで開催される医療・福祉機器の展示会「HOSPEX Japan 2016」にも出展する予定だ。

 なお、一包奉仕には、日経BP社「リアル開発会議」の開発テーマNo.005「全自動調剤監査システム『ドラッガー』」で生まれたアイデアや技術が盛り込まれている。