韓国と米国で2016年8月19日発売した韓国Samsung Electronics社のGalaxy Note7。歴代最高スペックで予約が殺到、生産が追い付かないとまで言われた人気端末だったが、発火事故が続いたため発売から2カ月足らずで生産販売中止となった。Samsung Electronics社は10月10日米国で、10月11日には韓国でGalaxy Note7の製造・発売中断を発表した。何が問題だったのか。

韓国Samsung Electronics社のGalaxy Note7。スタイラスペン入力機能と5.7型の大型ディスプレイを備える。(同社プレスリリースより)
韓国Samsung Electronics社のGalaxy Note7。スタイラスペン入力機能と5.7型の大型ディスプレイを備える。(同社プレスリリースより)
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 発売から間もない同年8月24日、韓国のオンラインコミュニティサイトに「充電中にGalaxy Note7が爆発した」という書き込みと写真が投稿された。写真の端末は左半分が焼け焦げ、ディスプレイも粉々になっていた。その後各地で「Galaxy Note7の2次電池から発火した」という写真がオンラインコミュニティサイトに登場、Samsung Electronics社が端末を回収して原因調査に乗り出した。

 2016年9月2日、Samsung Electronics社は発火の原因について「Galaxy Note7の2次電池に問題があった」と発表し、「Galaxy Note7には韓国Samsung SDI社と香港Amperex Technology(ATL)社のリチウムイオン2次電池を採用したが、Samsung SDI社の2次電池製造工程で問題があり、セル内部の極板が押され負極と正極が接触、過熱した」と説明した(同社の韓国語プレスリリース)。Samsung SDI社は携帯機器や電気自動車、電力貯蔵用大容量ストレージなどのリチウムイオン2次電池を手掛ける大手メーカーである。ATL社は日本のTDKが2005年に買収したメーカーだ。

 Samsung Electronics社はGalaxy Note7の2次電池をすべてATL社製に変えて新しいGalaxy Note7を製造、すでに販売した端末をすべて新しいGalaxy Note7に交換するか払い戻しするとの対策を発表した。

 2016年9月8日には、米国連邦航空庁(Federal Aviation Administration)がGalaxy Note7を機内で使用しないよう勧告、9月9日には米国消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety Commission)がGalaxy Note7の使用中断を勧告した。さらに、9月15日には米国CPSCがSamsung Electronics社の同意を得てGalaxy Note7のリコールを発表し、カナダ・メキシコでもリコールすることになった。

 Galaxy Note7の交換作業は順調に進み、韓国では9月19日から、米国では9月21日から、新しい端末がユーザーに届いていた。

 2016年10月1日、韓国ソウル市で新しく交換したGalaxy Note7が発火する事故が発生。中国内でも同じく新しくなったGalaxy Note7の発火事故が起きた。Samsung Electronics社は10月2日から韓国産業技術試験院に発火原因の分析を依頼。10月5日、韓国産業技術試験院は「2次電池の欠陥とみられる焼損の痕跡はなく、外部衝撃または電池が押された痕跡があった」と発表した。

 しかし、2016年10月4日にも米国ケンタッキー州の住宅で新しく交換したGalaxy Note7の発火事故が発生。10月6日には米国ケンタッキー州の空港で乗客が登場中だったサウスウエスト航空の旅客機内で乗客の交換済みGalaxy Note7から煙が出る事故があり、乗客全員が避難する騒ぎとなった。この事故により、米国連邦航空庁と米国消費者製品安全委員会がGalaxy Note7の発火原因について調査を始めることにした。

 2016年10月7日以降も台北市、ミネソタ州、バージニア州、テキサス州などで新しいGalaxy Note7の発火事故が発生。10月9日、米AT&T社、米T-Mobile US社など米国のキャリアはGalaxy Note7の販売と交換を中止した。

 2016年10月10日、Samsung Electronics社は米国向けサイトに「Galaxy Note7の販売・交換を中止する」と告知し、韓国証券取引所には「Galaxy Note7の生産量を調整する」と告知した。10月11日には韓国向けサイトにも「Galaxy Note7の販売・交換を暫定的に中止する」と告知した。韓国メディアは「事実上の断種(Galaxy Note7を二度と販売しないこと)」と報じ、Samsung Electronics社もこれを否定しなかった。