筑波大学の野外実験施設
筑波大学の野外実験施設
(出所:藻バイオテクノロジーズ)
[画像のクリックで拡大表示]

 三菱マテリアルは10月16日、筑波大学発のベンチャー企業である藻バイオテクノロジーズ(茨城県つくば市)、NECと協力し、セメント工場から排出するCO2を使ってプラスチック素材を製造する技術開発に取り組む。具体的には、「セメント製造工程で発生する高濃度CO2の特定藻類への効率的な固定化技術」および「培養した藻類から高機能なバイオプラスチック素材を製造する実用化技術」の開発に着手する。

 筑波大学を代表事業者として環境省より採択された「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一環。筑波大学と藻バイオテクノロジーズの持つ「排ガス・排水を使った藻類の培養と有機有用成分の回収に関する技術」、三菱マテリアルの持つ「廃棄物を熱源として利用する技術など」、NECの持つ「植物資源を用いた高機能バイオプラスチックの技術」を連携する。

 藻類は、農地に適さない土地でも培養でき、食糧生産と競合しないという長所がある。また、炭素を長期間貯蔵する樹木と異なり、藻類は十分なCO2量、栄養塩、太陽光によって循環的に増殖・収穫を繰り返すことが可能で、化石資源の代替として持続的に利用できる。さらに、強度や耐熱性などの機能性に優れるバイオプラスチック用素材の主要成分になる、長鎖脂肪酸や多糖類を高効率で生産する能力に優れる。

 同事業では、CO2発生源と藻類培養プロセスを連携させて、高機能なバイオプラスチック素材製造の一環プロセスを構築し、高濃度CO2を利用したバイオプラスチック素材の実用化を目指す。バイオプラスチック素材を石油合成系プラスチック素材の代替品として利用することで、大量のCO2削減を実現できるという。

 三菱マテリアルは、素材産業の中でもセメント製造工程で発生するCO2に着目し、セメントプロセスから高濃度かつ低有害成分のCO2を回収する技術を開発する。さらに、実排ガスを用いた藻類培養条件の最適化をラボ試験で行った後、培養槽を用いた実証試験を三菱マテリアルと筑波大学が共同で実施する。

 最終的には、回収された高濃度かつ低有害成分のCO2ガスを利用し、太陽光での光合成により特定藻類を生産し、高強度・高耐熱のバイオプラスチック素材を製造する。製造工程では、セメント製造時の低温排熱を有効活用するとともに、製造時に発生する残渣を同工程の熱源として利用する。2021年度内を目標に藻類由来の高機能性バイオプラスチック素材の実用化を目指す。