東芝が2016年10月18日に開催した技術戦略発表会では、別室に技術紹介の場も設けられた(関連記事1、図1)。出展された技術の中には、人工知能(AI)技術の牽引役として注目を集めるディープラーニング(深層学習)を応用したものがいくつかあった。
1つは、NANDフラッシュメモリーを製造する同社の四日市工場での歩留まり改善に向けた取り組みである。東芝は、製造工程の要所要所で撮影した電子顕微鏡(SEM)写真を、欠陥の種類ごとに分類する作業に、深層学習で学習させたDNN(Deep Neural Network)を用いていることを明らかにした。DNNを使った画像認識により、1日あたり約30万件撮影する写真の83%を適切な結果に分類できたという(図2)。作業を半自動化していた従来では、分類できた割合は49%に留まっていた。「自動分類の割合をさらに引き上げる伸び代はあると思うが、残り17%の画像の中には、人が見ても判断に迷うものも含まれているだろう」(説明員)。DNNは「画像認識にDNNを利用した論文に出てくるものと同程度の規模」(同)で、欠陥を判別しやすくする独自の工夫を施したという。学習や推論にはGPUを活用した。
AIを半導体の歩留まり改善に適用したもう1つの例として、ウエハー全体の画像をもとに不良の原因になった装置を自動的に判断する技術も紹介した。約4000ある製造装置の中から問題の装置を推定する作業を、従来の1件あたり6時間から、1/3の2時間以内に短縮できたという。ただし、「原因の推定に使っているのはDNNではなく、従来のデータマイニングやビッグデータ解析に使っているパターン抽出技術」(説明員)とした。この取り組みについては、2016年12月開催の半導体製造関連のシンポジウム「ISSM(International Symposium on Semiconductor Manufacturing)2016」で報告する予定という。