米環境保護庁(EPA)は10月10日、バラク・オバマ前大統領の政権下で2015年に施行されていた「クリーンパワー計画(CPP)」の撤廃を提案するための「ルール設定に関する告示(NPRM)」を発表した。

 トランプ大統領が今年の3月28日、CPP撤廃に向けた大統領令に署名しており、それに沿ったもの。EPAのウェブサイトでは、同大統領が任命したスコット・プルイットEPA長官がNPRMに署名する模様の写真と動画が掲載されている(図)。

「クリーンパワー計画」を撤廃するための告示書類に署名するスコット・プルイットEPA長官
「クリーンパワー計画」を撤廃するための告示書類に署名するスコット・プルイットEPA長官
(出所:EPA)

 今回の発表では、「CPPを再検討した結果、その規制がEPAの法定権利を越えているとEPAは見なしている。CPPの撤廃は米国のエネルギー資源開発も促進し、資源開発に関する規制を低減する。トランプ大統領の大統領令で確立された、エネルギー独立性に関する原則に沿うものだ」としている。

 CPPは、オバマ前政権下で「パリ協定」を批准した米国が温室効果ガス排出量を抑制するための基本ともいえる枠組みだった(関連記事1)。

 トランプ大統領は同協定からの離脱を今年6月に発表しており、CPP撤廃も公約通りに進めることで、石炭や天然ガスといった化石燃料を太陽光などの再生可能エネルギーより優先するエネルギー政策に回帰する流れを加速している。

 CPP撤廃に加えて、Suniva社による提訴などを受けた保護主義的な政策をトランプ大統領が打ち出すと、米国の太陽光発電産業のこれまでの成長に急ブレーキがかかると予想されており、関連業界や環境系の非営利団体などでは懸念が高まっている(関連記事2)(関連記事3)。

 一方、電力や情報通信技術(ICT)などの業界では今のところ太陽光や風力などの再エネを導入する動きが続いている。今後も米国の産業界がトランプ政権のエネルギー政策とは異なった方向に進むのか、またはどこかの時点でトランプ政権の意向に沿う流れとなるのか、注目される。