イタリアの大手電力会社であるエネル(Enel)社は10月9日、メキシコに新しく設立する再生可能エネルギー事業の持ち株会社の株式80%を、カナダとメキシコの機関投資家に売却することで両者と合意したと発表した。

エネル社がブラジル北東部に建設した114MW風力発電所の風力タービン
エネル社がブラジル北東部に建設した114MW風力発電所の風力タービン
(出所:Enel)
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 エネル社は現在、再エネ事業子会社であるEnel Green Power(EGP)のメキシコ現地法人であるEnel Green Power Mexico社を介して、8社の再エネSPV(特別目的事業体)を保有している。

 SPV8社の内訳は、稼働中の発電所3カ所(合計設備容量429MW)と建設中の発電所5カ所(同1283MW)で、設備容量の合計は1.712GWに達する。発電方式は、太陽光が約1GW、風力が約0.7GWである。

 これらのSPV8社を新設する持ち株会社に売却し、さらにその持ち株会社の株式の過半数となる80%を今回の合意で2者に売却する。買い手となる機関投資家は、カナダのケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)と、メキシコの主要な年金基金投資事業体であるCKD Infraestructura Mexico(CKD IM)。

 今回の合意により、エネルは「BSO(Build, Sell and Operate)」方式をさらに推し進め、再エネ事業の成長を図る。

 EGPのAntonio Cammisecra社長は、「プロジェクトはすべて長期の電力購入契約(PPA)がベースとなっており、EGPが発電所の開発や建設、運営を担当する。この新方式は、大規模で多角的なプロジェクトポートフォリオに投資したいパートナー企業にとってビジネスチャンスとなる」と述べている。

 今回の合意の下、EGPはSPVが保有する発電所を引き続き運営し、まだ建設中の発電所を完成させる。2020年1月以降、EGPはさらに他のプロジェクトも持ち株会社に移転させる可能性があるという。

 今回の取引は13億5000万ドルに相当し、約3億4000万ドルが新設持ち株会社の株式資本80%の売却、約10億1000万ドルがCDPQとCKDがSPVに拠出する資金である。

 今回の取引によって、エネル社の連結純負債は約19億ドル減少するという。BSO方式によって同社は、「計画中または建設中の再エネプロジェクトへの資金供給を迅速化し、全体的なリスクを低減しつつ価値の創出を加速できる」としている。

 エネル社は近年、中南米の再エネ事業に取り組んでおり、メキシコやブラジルで数百MW規模のメガソーラー(大規模太陽光発電所)を建設している(関連記事1)(関連記事2)。