EV向けと定置型の相乗効果

 定置型蓄電池のコストはEV向け蓄電池よりもまだ高コストだが、ドイツでは小規模な定置型Liイオン電池システムの設置時コストが、2014年第4四半期から2017年第2四半期までの間に60%下落したという。

 同報告書の著者でIRENAイノベーション・技術センターのディレクターを務めるDolf Gielen氏は、「今後10年から15年にわたってEVや運輸交通分野で使用されるLiイオン電池の成長は相乗効果として重要であり、定置型蓄電池のコスト下落にも寄与するだろう」と述べている。

 同氏はさらに、「車両電動化のトレンドは、EVが『Vehicle-to-Grid(V2G)』サービスを提供する機会を創出することにもなり、再生可能エネルギーと蓄電池の統合という好循環を生み出すうえでも役立つ。蓄電池技術は、サービスの柔軟性を電力網に与える。また、電気料金が高い地域や固定価格買取制度が廃止される市場では、屋根上に設置する太陽光発電システムと併用する蓄電池の実現性が高まる」と説明する(図2)。

図2●電力システムにおける定置型蓄電池の導入場所と用途のイメージ
図2●電力システムにおける定置型蓄電池の導入場所と用途のイメージ
(出所:IRENA)
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 現在、蓄電池の課題の一つとなっている寿命についても、同報告書は見通しを示している。2030年までに、Liイオン電池のカレンダー寿命は最大で約50%、充放電回数(サイクル寿命)は最大で90%、それぞれ向上する可能性があるという。

 同報告書ではLiイオン以外の蓄電池技術でも低コスト化の余地があるとする。

 具体的には、ナトリウム硫黄(NAS)電池で最大60%、フロー電池で67%、2030年までにコストが下落する可能性があるとしている。大容量フロー電池では初期投資コストが高額となるが、フルサイクルでの寿命が1万回を超えるものも多く、使用期間中のエネルギー・スループットに見合ったコストになるという。