台風の影響による水害で被災したCIS化合物型太陽光パネルの例
台風の影響による水害で被災したCIS化合物型太陽光パネルの例
(出所:日経BP)
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 太陽光パネルメーカーのソーラーフロンティア(東京都港区)は9月21日、「総務省『太陽光発電設備の廃棄処分等に関する実態調査の結果に基づく勧告』を受けて」と題して、災害などによって被災した同社製パネルに関する見解を発表した。

 総務省は、台風や地震などの被災時に損傷し、廃棄・リサイクル処理された太陽光パネルに関して調査した。これは、今後、使用済みの太陽光パネルが大量に廃棄・リサイクルされる時代が来ることを見越し、現状で一定の量が処理される被災時の処理状況に着目したものだ。

 その結果、適正な情報提供、適正な廃棄・リサイクル処理が十分に実施されていない場合があることがわかり、環境省と経済産業省に勧告した(勧告に関する記事1同記事2)。

 この勧告や、その後の報道によって業界の対応へ問題提起がなされたことに対して、ソーラーフロンティアでは、「太陽電池メーカーとして勧告の重大性・必要性を認識しており、勧告内容について、対応・確認を行っております」とし、いくつかの情報を公開した。

 総務省の調査では、台風の影響で被災した太陽光発電所において、感電などの防止措置が講じられないまま、破損パネルが約3カ月間、そのまま存置されていた後、この破損パネルを引き取った産業廃棄物処理業者が溶出試験を実施したところ、省令に基づく基準値を上回るセレンが検出された例が紹介されている。

 セレンは、CIS化合物型太陽光パネルの製造に使われ、太陽電池セル(発電素子)を形成している薄膜を構成する成分の一つである。

 CIS化合物型のパネルは、かつて複数メーカーが開発・製造した実績がある。ただし、本格的な大量生産に成功したのは、ソーラーフロンティアだけで、国内外で流通・設置されているCIS型パネルも同社製がほとんどとなっている。溶出試験でセレンが検出されたCIS化合物型の太陽光パネルも、ソーラーフロンティア製である可能性が高いとみられる。

 今回、ソーラーフロンティアが発表した見解では、自社製のパネルについて、セルの成分として含むセレンは、「産業廃棄物の埋め立て処分の判断基準として一般的な溶出試験において、溶出基準以下であることを確認しています」と強調している。

 太陽光パネルメーカーは、製品となるパネルを開発する際、性能や信頼性、安全性を担保するために、さまざまな試験を実施するとともに、その結果を受けて、材料や構成などを改善・改良しながら、設計や製造プロセスを固めていく。

 ソーラーフロンティアの場合、その一環として、外部の機関に溶出試験を委託し、パネルを構成しているセレンなどの物質の溶出が、産業廃棄物の埋め立て処分の判断基準を下回っていることを確認している。

 そのことを、改めて広く伝える内容と言える。