国際エネルギー機関(IEA)は21日、報告書「Energy Policies of IEA Countries: Japan 2016 Review」を公開、日本が再生可能エネルギー、原子力、高効率な火力発電の組み合わせによって、電源構成のバランスを取り多様化すべきだと発表した。それにより、日本が堅牢で低コストかつ安全な低炭素なエネルギーシステムを構築しやすくなるとしている。

 IEAは、2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故以来、日本のエネルギー政策がそれらによる影響を克服するのに精一杯だったことや、事故の結果として、日本の原発がいったんすべて停止してしまったことなどを指摘。その結果、化石燃料の使用、化石燃料の輸入、温室効果ガス排出量の大幅な急増につながったとする。

 IEAのポール・シモンズ副事務局長は同報告書の発表を日本の都内で行い、「エネルギー供給の安全保障に焦点を当てるという従来型の取り組みは奏功した。しかし、今後の難題は、より気候変動に関することだ」と述べた。日本が気候変動対策に着実に取り組み、2030年の目標を達成し、2050年の時点では温室効果ガス排出量をさらに大幅に削減すべきとした。

 IEAの同報告書は、日本が低炭素型の電源を増やすよう奨励している。再生可能エネルギー由来の電源は、時間が経てばコスト効率がもっと良くなり、技術面や地理的な面でさらに広がるはずだとする。

 原子力については、徐々に復元すべきだが、最高レベルでの安全基準が満たされ、国民による信頼が回復することが必須の条件としている。

 同報告書では、省エネルギーに関する日本の伝統的な政策や制度で効果的だったものも強調している。産業界におけるエネルギー使用の自粛や、家電機器や自動車における「トップランナー制度」などだ。建築物では、より厳しくなりつつある建築条例や「ネットゼロ・エネルギー」要件などに触れている。

 また、IEAはエネルギーの技術革新における日本の取り組みを称賛している。日本がエネルギーの主要な輸入国・消費国であるだけでなく、エネルギー技術の開発において認められたリーダーでもあるとした。

 シモンズ副事務局長は、「2030年以降、温室効果ガス排出量を大幅に削減するためには、全世界で新しい技術が必要になる。科学と技術で強いベースを持つ日本は、ピンチをチャンスに変えることができる」と日本への期待感を表明している。

 IEAはまた、日本に対し電力とガスの市場改革を完全に成し遂げるよう要請している。

 電力分野では、系統の統合を行ううえでインフラを追加することが必要であり、電力システム全体をみたときに最適となる場所で発電を行うために強いシグナルを出すよう市場設計を行うべきとした。長期的には、完全に独立した送電システム事業者(TSO)を確立すべきだと主張している。