米国の国際貿易委員会(ITC)は9月22日、結晶シリコンの太陽電池や太陽光パネルの輸入が大幅に増加したことが、それらの輸入品と競合する米国内の太陽電池産業が深刻な損害を受けた原因との判定結果を発表した。

 1974年通商法202条に基づいて米Suniva社が今年5月17日に申し立てていた訴訟に対し、ITCが判定したもの。この訴訟には、独SolarWorld社の米国子会社であるSolarWorld Americas社も原告として加わっていた。

 ITCの委員4人全員が、輸入品が米国の太陽電池産業への損害となったとの判断で票を投じたとしている。

 今回の判断結果に基づき、ITCは調査結果の改善措置フェーズへと進めることになる。具体的には、10月3日に公聴会を開催し、11月13日までにトランプ大統領に損害とした判断やその根拠、改善措置の勧告、その他の調査結果などをまとめた報告書を提出する。

 この発表を受け、米国太陽光エネルギー産業協会(SEIA)のアビゲイル・ロス・ホッパー会長兼CEOは、「ITCの決定は、米国の約9000社の太陽光関連企業とその従業員26万人にとって期待外れだ。自らのせいで事業に失敗した外国企業が米国の通商の法律を不当に利用し、失敗した投資に対する救済措置を得ようとしている」と批判的なコメントを発表した。

 Suniva社は2007年にジョージア州で設立された企業だが、2015年に中国の順風光電国際有限公司(Shunfeng Photovoltaic International)が株式の大半を取得している。このため、今回の提訴における原告は、いずれも外国企業の米国法人ということになる。

 SEIAは、8月に開催された公聴会の前にも同様に主張し、UTCにSuniva社らの提訴は不当だと訴えていた(関連記事1)。

 SEIAは、「Suniva社らの提案する措置によって太陽光パネルの価格が2倍に跳ね上がり、需要の67%が失われるため、太陽光への投資額が数十億ドル損なわれ、8万8000人分の従業員が失業する」とアナリストが試算しているという。

 米国ではトランプ政権が保護主義的な政策を打ち出していることもあり、ITCが判断を発表するより前の段階でも既に、一部のサプライヤーや発電事業者が太陽光パネルの買いだめや発注前倒しに動き始めていた(関連記事2)。

 ITCの発表後、米メディアでは、「トランプ大統領なら、輸入パネルに対する制裁措置もあり得る」といった論調も出始めた。

 米国内のパネル価格が急騰、太陽光発電市場の成長に急ブレーキがかかり、業界では解雇の嵐が吹き荒れるという「最悪のシナリオ」が、現実味を帯び始めている(関連記事3)。