図1 変換効率10.5%を達成したペロブスカイト太陽電池モジュール。セルの変換効率は1cm角のサイズでガラス基板16.8%、フィルム基板15.6%である。
図1 変換効率10.5%を達成したペロブスカイト太陽電池モジュール。セルの変換効率は1cm角のサイズでガラス基板16.8%、フィルム基板15.6%である。
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 東芝は樹脂フィルム基板上に形成した5cm角のペロブスカイト太陽電池モジュールで、変換効率10.5%を達成した(図1)。よく利用されるガラス基板と比較して、フィルム基板上に実装するため、モジュールを軽量化できる利点がある。加えて、将来はロール・ツー・ロール方式の生産にも対応できると期待されている。

 ペロブスカイト太陽電池は、結晶Si太陽電池と同等の変換効率や、軽量で製造に印刷技術を使えコストの低減を期待できるため、多くの企業や研究機関で研究が進んでいる。

 フィルム基板に実装したペロブスカイト太陽電池モジュールの作成において、課題になっていたのが、均一で大面積のペロブスカイト多結晶膜を作る方法と、結晶膜を複数のセルに分割するために必要なスクライブ工程である。特にスクライブ工程では、フィルム基板が柔らかいために、刃圧が強いと補助電極の素子が壊れたり、刃圧が弱いと十分にスクライブできず、セル間の接続抵抗が大きくなる問題があった。

 均一で大面積のペロブスカイト多結晶膜の形成のために、東芝は有機薄膜太陽電池用に開発していた「メニスカス塗布印刷技術」を転用する(図2)。アプリケーターと印刷する基板の間に隙間を空け、表面張力を利用して均一にインクを塗布する技術だ。

図2 表面張力を利用してムラなくインクを塗布する。基板とアプリケーターとの隙間は200μm~1mmの間で条件によって調整する。(図:東芝)
図2 表面張力を利用してムラなくインクを塗布する。基板とアプリケーターとの隙間は200μm~1mmの間で条件によって調整する。(図:東芝)
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 さらに樹脂フィルム基板向けのスクライブ技術を開発した(図3)。弱い刃圧でも取り除ける膜と補助電極の材料の組み合わせを見つけ、セル間抵抗を小さくした。従来は数Ω~200Ωあったセル間抵抗を、同技術の適用により約0.3Ωにした。これは、固いガラス基板を用いた場合のセル間抵抗と同じという。

図3 弱い刃圧でも膜を取り除けるスクライブ技術を開発(図:東芝)
図3 弱い刃圧でも膜を取り除けるスクライブ技術を開発(図:東芝)
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 今後はペロブスカイト材料組成の変更や製造プロセスの改善などでモジュールサイズの拡大と結晶Siと同等の変換効率を目指す。さらに、電池の製造なども含めて発電コスト7円/kWhを目指すという。