日食時も停電に陥らず

2015年3月の日食時も、電力網は安定的に運用された
2015年3月の日食時も、電力網は安定的に運用された
(出所:日経BP)
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 再エネへの転換を進めるなか、現在では、約40万人が再エネ関連産業で雇用されている。また、FIT制度の調整に伴って、投資額は減っているものの、電力供給に占める再エネ比率は着実に向上している。

 フーケ氏は、デンマークとの国境近くに住んでおり、日常的に購入している電力のうち約80%を風力発電が占めているという。

 現在、ドイツの電力系統では、再エネは「リラックスした状態で受け入れている」。象徴的な例として、2015年3月に起きた日食の際の電力需給を紹介した。

 日食の間、太陽光発電電力は、大幅に減ることが予想され、電力が供給不足になったり、日食から正常な状態に復帰する際に、太陽光発電電力が急激に出力を上げることなどによって、停電の恐れも指摘されていた。しかし、実際には、電力網は安定的に運用され、停電は起きなかった。

 また、ドイツにおいて現在、電力供給に何らかのトラブルが起きる時間は、年間で平均約12分間となっている。化石燃料や原子力を多く活用していた当時は、これより長い同16分間だった。供給電力の86%を原子力が占めているフランスでは、同68分間と、さらに長い。

 こうしたことからも、再エネを大量導入しても、系統の安定性を損なわない運用方法があるとしている。

 日本、韓国、中国、ロシアの4カ国の電力網を連系しようとするアジアスーパーグリッド構想に関しては、東西ドイツの統一時、それまで個別に分かれていた電力網の連系時に、停電なども起きず、ほぼ問題なく連系できた例を挙げた。エネルギー分野は、両国とも長い歴史があり、潜在的に高い対応能力があったという。北東アジアの国々の連系も成功するだろうとした。