学習用データとなる心臓CT検査画像(左)と冠動脈画像(右)
学習用データとなる心臓CT検査画像(左)と冠動脈画像(右)
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 一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院(福岡県北九州市)とGEヘルスケア・ジャパンは、人工知能(AI)を活用した冠動脈内腔自動検出の共同研究契約を締結、2018年8月28日に研究を開始した。手作業による心臓CT解析を自動化することで、より精度が高くリアルタイムに診断が可能な心臓病診断システムの開発を目指す。

 同病院に蓄積された過去4年間、約2万件の心臓CT検査画像と冠動脈画像から、心臓の特徴を学習させることにより、冠動脈自動診断を実現していく。共同研究では、(1)心臓病診断のさらなる効率化、(2)AIを用いた冠動脈の自動抽出、(3)血管内腔のより高精度な抽出、(4)手動解析でみられる診断エラーの解消、といった項目の検討が予定されている。今後、それぞれについて具体的な内容の協議を進めていくという。

 急性心筋梗塞は、病院到着から90分以内に正確な診断と速やかな治療を行う必要がある。また、狭心症においても、心電図や採血、心臓超音波などの検査では狭窄がみつからず、心臓CT検査でなければ診断が困難な場合もある。

 現状の心臓CT検査の解析は、トレーニングを受けた医療従事者が行っても、数十分から1時間程度かかることがあり、夜間や休日の発症の際に、解析が不可能である施設が多いという。このため、急性心筋梗塞や狭心症の診断に時間を要することが課題だった。

 今回の共同研究において、同病院 循環器内科 副部長の山地杏平氏とGEヘルスケアの研究チームは、AI技術の一つである深層学習(ディープラーニング)に分類される「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」を用いた。CNNは、ニューラルネットワークに畳み込み操作を導入したもので、全結合層、畳み込み層、プーリング層など幾つかの特徴的な機能を持った層で構成されるニューラルネットワークである。

 具体的には、CNNの一手法であるU-Netを活用した。U-Netは、CNNで分類した物を実画像上の位置に反映させる、医療画像のセグメンテーションのために提案されたモデルである。