今回開発したバイオマス発電車
今回開発したバイオマス発電車
(出所:NEDO)
[画像のクリックで拡大表示]
フード・グリーン発電システムの概要
フード・グリーン発電システムの概要
(出所:NEDO)
[画像のクリックで拡大表示]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とティービーエム(埼玉県所沢市)は9月8日、飲食店や食品工場の排水から分離回収される油脂を原料とした発電用燃料の製造に成功したと発表した。同燃料を利用した発電機を搭載した「バイオマス発電車」を開発し、埼玉県入間市主催で9月10日に開催された「第23回いるま太鼓セッション」に電力供給を行う実証実験を実施した。

 飲食店や商業施設、食品工場などの排水は、下水道法や水質汚濁防止法で規定する排水基準以下の濃度で排水することが定められている。そのため事実上、下水道や公共用水域へ汚水や油脂が直接流出することを防ぐグリース阻集器(グリース・トラップ)の設置が義務付けられている。

 グリース阻集器で集められる排水油脂(トラップグリース)の賦存量は、全国で年間31万tと推定される。排水油脂は、主に動物性油脂から構成されるが、水分含有率や酸価が高く不純物も多いため、燃料として使うことが困難で未利用資源となっていた。これまでは、産業廃棄物として焼却処分されていた。

 ティービーエムは、NEDOの「ベンチャー企業等による新エネルギー技術革新支援事業」の一環で、2013年度からトラップグリースを用いたバイオマス発電システム「フード・グリーン発電システム」に取り組んでいる。今回、排水から分離回収した動物性油脂を精製改質する技術を開発し、化学薬品を一切使わず、副産物も出さずに発電用燃料に活用することに成功した。

 合わせて、同燃料を利用して発電する100kVA規模の発電機を搭載した「バイオマス発電車」を開発した。実証実験では、松屋フーズの協力のもと、同社の入間店ほか埼玉県内98店舗から回収された動物性油脂から製造した発電用燃料を用いて、イベント内の店舗に設置した調理機器や電灯、熱中症対策となるクールスポットを作るミスト発生装置などに電力を供給した。

 また、入間市主催で10月29~30日に開催予定の「第39回入間万燈まつり」や、東京都武蔵野市主催で11月開催予定の環境フェスタなど東京都内のさまざまな自治体イベントで実証実験を予定している。2020年までにフード・グリーン発電システムを首都圏全域に普及させることで、新エネルギーの地産地消モデルの確立を目指す。