Insolight社が開発中の集光型太陽光パネル
図1 Insolight社が開発中の集光型太陽光パネル
(出所: EFPL/Alain Herzog)
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Insolight社が太陽光パネルで集光に使用するレンズ
図2 Insolight社が太陽光パネルで集光に使用するレンズ
(出所: EFPL/Alain Herzog)
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 スイスのInsolight社は7日、同社が開発中の集光型太陽光パネルで36.4%の変換効率を達成したと発表した(図1)。

 今回開発した試作品の変換効率は、第三者機関であるドイツのフラウンホーファー協会(Fraunhofer ISE)によって認証を受けた。屋根上に設置可能な平らな太陽光パネルの変換効率としては、世界記録となった可能性もあるという。

 現在、市販されている太陽光パネルの変換効率は、高いものでも18~20%程度である。したがって、同社の太陽光パネルの変換効率は、市販品の約2倍弱と言える。

 集光型太陽光パネルでは、透明で薄く平らのプラスチック製光学レンズを太陽電池の上に積層する。これによって太陽光の異なる波長を捕捉して集光し、太陽電池セルに照射することにより、高い変換効率を達成する。理論効率は最高で42%に達するという。

 集光型の太陽電池は既に存在するが、製造コストが高価なためこれまでは宇宙船など限定的な用途でしか使用されていない。

 同社は安価なレンズを使用して太陽電池に集光することで、低コスト化を目指す(図2)。一般的な家庭にも手が届く価格帯の太陽光パネルとして製品化することを目標にしている。同社が開発中の光学系技術では、特許も取得済みという。

 Insolight社は、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)発のベンチャー企業。3人の創業者は、同校の卒業生である。それぞれ一度企業などで勤務した経験を持ち、低コストで高効率な太陽光パネルを実用化するために起業した。EPFLによるベンチャー企業向け資金援助「EPFL Innogrants」も受けている。

 同社が市場投入する太陽光パネルの単価は「従来品と比べて少し高くなるが、変換効率が約2倍となるため差額の回収は早い」と、同社の最高執行責任者(COO)のFlorian Gerlich氏は述べている。

 高い変換効率で設置が簡単な太陽光パネルを一般向けに製品化することにより、化石燃料を代替できる太陽光発電システムの提供を目指している。