「米Intersil社には(買収額に見合うだけの)大きな価値がある」――。ルネサス エレクトロニクス 執行役員常務でCFOの柴田英利氏は、米Intersil社買収に関してこう力説した(関連記事)。ルネサスが2016年9月13日に開催した説明会の中で、アナリストから「Intersil社の直近12カ月(2015年7月~2016年6月)の営業利益が1億600万米ドルに対して約32億米ドルという買収額は高すぎるのではないか」と指摘され、柴田氏が冒頭のように応えた。

発表会に登壇する呉氏
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買収のメリットや両社の売上高など
買収のメリットや両社の売上高など
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 その主な理由は、マイコン分野を超える市場成長を今後期待できるアナログ分野の事業を今回の買収により強化できるからである。Intersil社は2015年の売上高は5億2160万米ドル。このうち、89%をアナログ分野が大半を占める(2015年)。ルネサスもアナログ事業を手掛けているが、「Intersil社とほとんどかぶらず、相互補完が可能」(柴田氏)とみる。同社のアナログ分野の製品や技術だけでなく、「優秀なアナログ技術者を獲得できる」(同氏)ことも魅力に挙げる。「優秀なアナログ技術者を育成するには数年では足りず、長期間かかる。その上、熟練のアナログ技術者は企業間の争奪戦が激しく、常に足りない状況。それだけに、今回の買収で時間を買った」(同氏)かたちである。

対象市場の伸び。アナログがマイコンに比べて成長する
対象市場の伸び。アナログがマイコンに比べて成長する
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 今回の買収の結果、ルネサスは、売り上げ増や事業基盤の拡大によるコスト削減などにより、営業利益で約1億7000万米ドル規模のシナジー(増額)を見込む。そのうち、およそ1/4は、資材調達の効率化や経費利用の効率化、一般管理費の削減などのコスト削減によるものとする。

売り上げ構成
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