セルと車載用太陽電池を生産する二色の浜工場
セルと車載用太陽電池を生産する二色の浜工場
(出所:日経BP)
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 パナソニックは9月7日、太陽電池事業(ソーラー事業)の競争力強化に向けた構造改革について公表した。太陽光パネル(太陽電池モジュール)販売中心から、セル(発電素子)単体のデバイス販売に乗り出す一方、滋賀工場を閉鎖する。

 同社は、これまで太陽光パネルを主に住宅屋根や産業用太陽光向けに販売してきた。今後は、ヘテロ接合型太陽電池セル「HIT」の持つ高出力や優れた高温特性などの特徴を生かし、セル単体のB2B事業を拡大していくという。

 また、生産に関しては、現在、国内の二色の浜工場(大阪府貝塚市)とマレーシアでセルとパネル、島根工場(島根県雲南市)でセル、滋賀工場でパネルを生産している。滋賀工場の閉鎖に伴い、今後は、セルに関してはグローバルでの生産体制を維持する一方、パネルの生産体制に関しては、住宅・産業向けはマレーシア、車載用に関しては、二色の浜工場で生産するとしている。

 加えて、すでに同社は米テスラと、蓄電池・太陽電池事業で協業することを発表している。両社により米ニューヨーク州のバッファロー工場で太陽電池を生産し、パナソニックがセル生産の工程を担っていく方向で計画が進んでいるという。一方、米国では、現在、オレゴン州の工場でシリコン塊(インゴット)を製造しているが、今秋に生産を止め、原材料は外部調達に切り替える方向で検討している。

 テスラとの協業は、セルの生産・販売に経営資源を重点配分していくという、今回公表した事業改革の流れにも合致している。

 閉鎖を決めた滋賀工場は2008年から太陽光パネルを生産していたが、2018年3月末でパネル生産を終了する。従業員63人は、パナソニックグループ内で異動・再配置し、雇用を確保する方針。

 パナソニックの太陽電池は、単結晶シリコンをベースにアモルファス(非晶質)シリコンを積層したヘテロ構造が特徴で、高出力に加え、日照の弱い朝夕や曇りでも相対的に発電量が多く、夏の高温時でも発電ロスが少ないなどの利点がある。

 一方で、生産工程が複雑なため、製造コストの低減に限界があり、国内で固定価格買取(FIT)制度がスタートして以降も、価格競争の激しいメガソーラー(大規模太陽光発電所)向けにはほとんど出荷せず、住宅向け中心の販売戦略を取ってきた。

 ただ、買取価格の低下による市場縮小が、メガソーラー市場よりも住宅向け市場に大きく影響した上、ここ数年、海外勢も日本の住宅市場への販売に本腰を入れ始めるなど、競争が激しくなっていた。