中国の国家電網前会長との出会いが起点に
きっかけは、2016年1月に、中国・国家電網のリュウ・ゼンヤ前会長に出会ったことだった。同じような構想を持っていることがわかり、すぐに意気投合したという。両氏が声をかけた韓国電力公社(KEPCO)、ロシアの送電網会社であるROSSETI社も関心を示し、この4社で、電力網の国際連系を推進するための調査、企画立案を目的とした覚書を2016年3月に締結した(関連ニュース)。
検討しているのは、モンゴルから中国、韓国を経て、日本まで連系するルートと、モンゴルからロシアを経て日本まで連系するルートの二つである。孫氏は、この二つのルートを合わせて、「ゴールデンリング」と呼んでいる。
アジアは世界の人口の3分の2を占める。そのアジアにおいて、現在の発電量の76%、電力消費量の77%を、MOUを結んだ企業が本拠を置く4カ国が占めている。「ゴールデンリングで4カ国を結ぶ二つの電力網が実現すれば、世界のエネルギー問題に光が見えてくる」(孫氏)。
アジアスーパーグリッドでは、まず技術的に可能なのか、事業性があるのかどうかを調査している。すでに、技術的には可能なことを確認した。事業性については、試算の途中結果としながらも、「採算の合いそうなことが見えてきた」と、手ごたえを感じている。
試算中のため、詳細の数値は未確定としつつ、「いずれのルートでも、モンゴルの風力発電所などから送電する電気のコストが、日本における石炭火力発電のコストである10.5米セントを下回るのは間違いなさそう」という。
ロシア側のルートでは、ロシアの水力発電電力を、ロシア内の電力網と海底ケーブルを通じて日本に送電した場合で試算している。
「従来、再エネは、クリーン(安心)で安全という利点はあったものの、安定性がなく、コストが高いという課題があった。それが、他国の再エネ電源を融通することで、『不安定で、高コスト』から、『安定していて、低コスト』に変わる見通しがついた」。孫氏は、こう強調した。