日本版シュタットベルケの先行例(みやま市)
日本版シュタットベルケの先行例(みやま市)
(出所:一般社団法人日本シュタットベルケネットワーク)
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 ドイツの官民連携型インフラサービス事業者である「シュタットベルケ」の特徴を取り入れ、電力小売り事業を活用して地域の課題解決に貢献する「一般社団法人日本シュタットベルケネットワーク」が8月18日に設立された。

 代表理事には、ラウパッハ・スミヤ ヨーク氏(立命館大学経営部国際科教授)、理事には原田達朗氏(九州大学炭素資源国際教育センター教授)、諸富徹氏(京都大学院経済研究科教授)などが就任した。正会員には、みやまスマートエネルギー、NTTデータ経営研究所が名を連ねている。

 「シュタットベルケ」とは、自治体出資の民間経営事業体で固定価格買取制度(FIT)などを活用したエネルギー事業で得た収益を利用して、地域に必要なインフラサービスを提供する。地域の公共交通サービスなど単独では不採算の事業を取り込みつつ、事業体全体では黒字を確保することで、持続可能性を担保するという。

 ドイツ国内には1400程度のシュタットベルケが存在。なかには100年を超える歴史を持ち、従業員数が1000人を超える規模のシュタットベルケがある一方で、地域の資源を有効活用していない地域などに新たな事業と雇用を生み出すべく、新たに設立するシュタットベルケも存在する。

 一方、日本ではドイツから20年近く遅れて電力の全面自由化とFIT制度の導入が進んでおり、多くの地方自治体で再生可能エネルギーを活用した地域内電力小売り事業の検討が始まりつつある。しかし、自治体には企業体運営ノウハウなどが不足しており、自力で「日本版シュタットベルケ」を立ち上げるには課題が多いという。

 今回、設立した日本シュタットベルケネットワークでは、地方自治体に対して、電力小売り事業を中心としたエネルギー事業や、地域課題を解決するソーシャル事業などの事業計画の策定、事業計画に基づく企業体の設立および運営などを支援する。

 また、講習会や勉強会を通じたシュタットベルケに関する最新情報の共有、認知度向上に向けたワークショップやシンポジウムの開催、ドイツなどとの国際交流を推進する。ドイツの先例に学びつつ、日本の特徴を取り込んだ日本版シュタットベルケの創出を目指すとしている。