帯広市中島町にあるメガソーラーが浸水、損傷
帯広市中島町にあるメガソーラーが浸水、損傷
台風10号の影響で、十勝地域に大きな被害が生じた。9月6日に撮影(出所:日経BP)
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戸蔦別川の堤防の決壊による氾濫流がメガソーラーへ
戸蔦別川の堤防の決壊による氾濫流がメガソーラーへ
フェンスや架台が流木などを堰き止める形になりながらも、さらに北側に流れ、陸側から札内川の堤防も決壊させた(出所:日経BP)
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メガソーラーが流木などの一部を堰き止め、下流への流出を防いでいることがわかる
メガソーラーが流木などの一部を堰き止め、下流への流出を防いでいることがわかる
氾濫流は、左下側から浸水し、中央の赤丸の場所で、陸側から堤防を再び決壊した(出所:国土交通省 北海道開発局 帯広開発建設部)
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奥に見えるのが当初の発電所、手前が後から開発した発電所
奥に見えるのが当初の発電所、手前が後から開発した発電所
太陽光パネルが異なる。9月6日に撮影(出所:日経BP)
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10m以上の大きな流木も少なくない
10m以上の大きな流木も少なくない
9月6日に撮影(出所:日経BP)
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流木だけでなくビートも見える
流木だけでなくビートも見える
9月6日に撮影(出所:日経BP)
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氾濫流の衝撃を物語る
氾濫流の衝撃を物語る
9月6日に撮影(出所:日経BP)
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堤防の決壊地点は緊急復旧工事中
堤防の決壊地点は緊急復旧工事中
9月6日に撮影(出所:日経BP)
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 8月30日から31日にかけて、東北や北海道に上陸した台風10号によって、北海道帯広市中島町にある太陽光発電所が浸水、損傷した。

 被災したのは、出力1.2MWと数百kWの発電所で、堤防の決壊した河川から押し寄せた泥水や流木によって、フェンスが損壊し、架台の一部が太陽光パネルごと倒壊するなどの被害が生じた。

 今回の堤防決壊に関して、国土交通省 北海道開発局 帯広開発建設部は9月2日、「台風第10号による降雨に伴う出水の概要」を発表した。

 帯広市を含む十勝地方は、台風10号の影響により、8月30日から31日にかけて、広い範囲で大雨が降った。十勝川や札内川で「計画高水位」を超えるなど、12カ所で観測史上、最高の水位を記録した。

 「計画高水位」は、ダムや貯水池などの洪水防止設備で吸収できる水量を除いた後、川を流れる水が到達すると想定されている水位で、堤防はこの水位に対して余裕を持つように設計される。

 帯広開発建設部は、24時間体制で気象や河川などを監視し、洪水の予報や水防警報などを告知するとともに、樋門や排水機場を調整するなど、河川の氾濫を防ぐ対応をとった。

 しかし、同建設部が管理しているいくつかの川において、畑の浸水や堤防の決壊が起きた。札内川、利別川、音更川、猿別川である。

 このうち、札内川では、戸蔦別川との合流点の目の前で、左側の堤防が約200mにわたって決壊したと発表した。札内川と戸蔦別川に挟まれている場所となる。

 札内川と戸蔦別川は、管理者が異なる。札内川は国土交通省、戸蔦別川は北海道が管理している。このため、札内川側での堤防決壊や対処策は、同省の帯広開発建設部が発表した。

 堤防の決壊は、まず、北海道が管理している戸蔦別川の右側の堤防で起きた。決壊した場所の幅は500m程度とみられる。

 決壊地点は、札内川と戸蔦別川に挟まれている場所にある。その間には、畑や農業関連の倉庫のほか、メガソーラーが立地しており、浸水被害を受けた。

 戸蔦別川の右岸の堤防の決壊により、札内川と戸蔦別川に挟まれている場所に、戸蔦別川から、水と土が入り混じった泥、流木などが氾濫流となって流れ込んだ。

 戸蔦別川の決壊地点の近くは、ほぼ畑となっている。砂糖の原料となるビートや、ジャガイモが栽培されている。氾濫流は、地中も侵食し、ビートやジャガイモを飲み込みながら、メガソーラーの敷地にまで押し寄せた。

 氾濫流は、メガソーラーの南東側を中心に流れ込んだ。フェンスや架台が、流木やこれらの作物などの一部を堰き止めるような形にはなったが、氾濫流は止まらず、さらに北側に流れていった。

 そこは、戸蔦別川と札内川の合流点付近となる。この場所で、今度は、陸地側から札内川の堤防を決壊させた。これが、帯広開発建設部が発表した堤防の決壊である。

 被災したメガソーラーは、「ティー・ワイ帯広大正太陽光発電所」で、発電事業者はティー・ワイ(北海道河西郡更別村)となる(関連コラム)。

 稼働した当初、出力約1.2MWの1つの発電所だったが、その後、新たに開発した出力数百kWの別の発電所が隣接している。当初の約1.2MWは中国インリー・グリーンエナジー製、その後に開発した発電所は、ソーラーフロンティア製の太陽光パネルを採用している。

 メガソーラーの外周を囲うフェンスのうち、氾濫流が押し寄せた場所はほぼすべて、泥や倒木、ビートやジャガイモにまみれながら倒れ、中には、基礎から引き抜かれているような状態となっている場所もある。

 フェンスで食い止められなかった氾濫流は、メガソーラーの敷地内に押し寄せた。北海道のメガソーラーは、積雪に耐える構造とするため、他の地域に比べて、設置高を大きくとり、かつ、強固な架台が採用されている。

 その架台にも、人の背よりも高い位置まで、倒木や草木、ビートやジャガイモが付着している。最も勢いが強い流れに遭遇したとみられる南東側には、太陽光パネルに近い位置の架台が曲がったり、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)ごと損傷している部分もみられる。
 
 倒木は、10m以上ありそうな、大きなものも少なくないなど、氾濫流の威力を物語っている。

 この2カ所の堤防の決壊に対して、北海道(十勝総合振興局)、国土交通省の帯広開発建設部の両者は、8月31日に緊急復旧工事に着手している。