ウォークマン「NW-WM1Z」
ウォークマン「NW-WM1Z」
ボディ本体が銅で、表面に金メッキを施した。筆者が撮影。
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高級ヘッドホン「MDR-Z1R」とヘッドホンアンプ「TA-ZH1ES」
高級ヘッドホン「MDR-Z1R」とヘッドホンアンプ「TA-ZH1ES」
筆者が撮影。
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 ソニーは高級路線をひた走っている。2016年8月30日に発表された4Kテレビ「BRAVIA Z9Dシリーズ」の100型「KJ-100Z9D」が700万円。レーザー光源のHDR対応4Kプロジェクター「VPL-VW5000ES」が米国で6万米ドル。コンシューマーエレクトロニクス見本市「IFA2016」(ドイツ・ベルリン、2016年9月2~7日)で発表されたポータブルオーディオの「Signature Series」では、高級ウォークマン「NW-WM1Z」が3300ユーロ、高級ヘッドホン「MDR-Z1R」が2200ユーロ、高級ヘッドホンアンプ「TA-ZH1ES」が2000ユーロ。

 プレミアム製品として、従来と1桁違う価格(もちろん性能も)を与えることが可能になったのが、今年(2016年)に入ってのソニーの大きな変化だ。なぜ今、ソニーはプレミアム路線を選択したのか。

 IFA2016初日の9月2日の朝、日本人記者を対象に開催された同社社長兼CEOの平井一夫氏を囲むラウンドテーブルや、別の機会の筆者とのインタビューから探ってみよう。まず平井氏の基本認識について。2013年のIFAでの“ハイレゾ発進時”のインタビューが今でも記憶に鮮明だ。

 「長い間に培われた、人の五感にアピールするところの技術力の高さ、音のこだわり、絵に対するこだわり、デザインのこだわりは、他のメーカーさんと比べてもかなり資産があります。ややもすると、埋もれた時代はありましたが、それをうまく新しい商品に持ってくるのが、とても重要だと思っています。なんでもかんでもクラウドに持っていけちゃう昨今だからこそ、人間の五感に触れるところは大事にしなければなりません。音の良いヘッドホン、音の良いウォークマン、音の良いスピーカー、絵の良いテレビ、音の良いテレビなど、音が良い、絵が良い、手触りが気持ち良い、質感・デザインが素敵などの感覚はクラウドに持っていけません。それこそソニーのDNAそのものです。五感部分を、ソニーがやらないでどうするのか。そこで勝たなくてどうするんですかというこだわりを、私は常に持っています。クラウドの時代だからこそ、ソニーは五感を中心にした感動を提案したいです」。その姿勢は、今でも基本は全く変わっていない。この思いを今は「ラスト・ワン・インチ」という言葉で表現している。