評価用にDialog社が作製した25~35W対応のACアダプター(充電器)。
評価用にDialog社が作製した25~35W対応のACアダプター(充電器)。
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DA8801などを用いると、コンセントからスマートフォンの2次電池までの電力変換効率は、高速充電でも91%を超えるという。
DA8801などを用いると、コンセントからスマートフォンの2次電池までの電力変換効率は、高速充電でも91%を超えるという。
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TSMCの資料より。IはInfineon社、TはTI社、Fは富士通セミコンダクター(設計はTransphorm社)、Pはパナソニックを指すとみられる
TSMCの資料より。IはInfineon社、TはTI社、Fは富士通セミコンダクター(設計はTransphorm社)、Pはパナソニックを指すとみられる
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 英Dialog Semiconductor社は、GaN FETやレベルシフターなどを備えたIC「DA8801」を発売する。一般的なサンプル出荷は2016年第4四半期から、量産出荷は2017年後半から。仕様に関しては既報の通り。本稿では産業的なインパクトなどを、電源産業が集積する台湾で取材した結果を記す。

 結論から言えばDialog社は、民生用電源部品の強者を脅かしうる。脅かされうるのは、例えば米Fairchild Semiconductor(米ON Semiconductorが2016年8月末に買収完了予定)やドイツInfineon Technologies社のMOSFET事業である。台湾Delta(台達電)社は、これらの企業の製品を多用している。

 注目すべきは、Dialog社がGaN製品を出したことである。これまでのGaN製品は産業用途で非常に高価だった。だが、同社は量にこだわる攻めの高成長企業。米Apple社のスマートフォンや中国Xiaomi(小米)社の歩数・心拍計(ウエラブル端末)「手環」シリーズなどにDialog社の製品が採用されている。今回発表したDA8801でも、Dialog社は業界の期待に違わず、GaN製品としてかなりの低価格を志向している。

 同社は、具体的な単価を明かしていない。しかし、「ACアダプターのBOMコストを上げない」(Dialog社 事業開発担当のTomas Moreno氏)と明言する。これはどういうことか。筆者がよく知るノートパソコンのBOMコストを通じて説明する。

なお、Dialog社はスマートフォン/タブレット(25~35WのACアダプター/充電器)向けのDA8801に続いて、ノートパソコン(45~90W)向けの製品も「12~18カ月後に発表する」(同社 事業開発担当のMark Tyndall氏)ほか、100~1kW対応品も投入する予定だ。