発売した近赤外光カメラシステム「LIGHTVISION」
発売した近赤外光カメラシステム「LIGHTVISION」
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 島津製作所は2016年8月29日、乳がんの手術時にリンパ管を可視化し、転移の診断を支援する近赤外光カメラシステム「LIGHTVISION」を発売した。これにより、医療用近赤外光カメラ市場に参入する。

 乳がんの手術では一般に、がん細胞の転移を診断するために、センチネルリンパ節と呼ぶリンパ節を切除し診断する。センチネルリンパ節への転移がなければ、腋窩リンパ節の切除を省略し、リンパ浮腫の発症を防ぐことができる。ただし、センチネルリンパ節は肉眼では特定できないため、従来は色素法や放射線アイソトープ法で同定していた。

 これに対しLIGHTVISIONでは、ICG(インドシアニングリーン)と呼ぶ薬剤を用いた蛍光法を使う。投与したICGに近赤外光を照射すると、励起されたICGが近赤外光を発する。この現象を利用し、ICGが発する近赤外光を撮影し画像化することで、乳がん手術中に組織表面下のリンパ管をリアルタイムに可視化できるという。

 高精細な画像センサーを内蔵しているため、執刀医は手元ではなくモニターを見ながら手術を進めることが可能だ。手術室の照明を消す必要もなく、明視野での撮影に対応する。

 モニターには可視画像と近赤外蛍光画像、そして両者を重ねた画像の3種類を同時に表示できる。重ねた画像では、蛍光箇所を青や緑で表示可能。カメラは最大10倍の電動ズームや自動でのフォーカス、露光、ホワイトバランスの調節に対応する。アームは本体から約180cmまで伸ばせる。価格は2400万円(税別)から。

 島津製作所はかねて、乳がんの検査・治療分野に力を入れており、2014年には乳房専用PET装置「Elmammo(エルマンモ)」を発売した(関連記事)。同社は病気の早期診断や検査、治療、予後管理などへの総合的な貢献を目指すといい、LIGHTVISIONを応用した血管造影技術の開発にも取り組んでいく。