「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」実証システムの構成
「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」実証システムの構成
(出所:3者共同のニュースリリース)
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太陽光の出力変動の補償方法
太陽光の出力変動の補償方法
(出所:3者共同のニュースリリース)
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 東北大学と前川製作所(東京都江東区)は、太陽光発電の電力を水素システムと蓄電システムで貯める「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を開発した。通常時の太陽光電力の有効利用と非常用電源としての機能を合わせ持つ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の実証事業として仙台市茂庭浄水場で開始した。

 実証システムは、20kWの太陽光発電、24kWの水電解装置、15kWの燃料電池システム、30m3の水素ガスタンス、240Nm3の水素吸蔵合金、15kW・200kJの電気二重層コンデンサ(キャパシタ)で構成する。実適用時の約50分の1の規模という。

 水素システムを活用することで、非常時に必要となる3日分のエネルギーを省スペースで貯蔵できるほか、非常時でも太陽光発電から水素を生成することで、外部燃料調達なしでも運転を継続できる。通常時には、太陽光の活用と水素貯蔵により、ろ過砂洗浄などの負荷平準化やピークカット・シフトが可能。

 太陽光の出力と目標出力(負荷消費電力)の差の時間変化分を、未来予測技術により長周期成分と短周期成分に分離。長周期成分は、エネルギーが余剰の場合は水電解装置を用いて水素を製造し、逆に不足の場合は燃料電池で発電することで変動分を補償する。

 短周期成分は、即応性に優れたキャパシタを電力貯蔵に用いることで、高精度な補償を実現したという。これらの補償方法により直流母線電圧を一定に保ち、安定した電力供給を可能にするという。

 仙台市では主要な浄水場に24時間の停電に対応可能な非常用自家用発電装置を設置していたが、東日本大震災時には停電時間が24時間を超え、県内の石油備蓄基地の被害や物流の遮断により、燃料確保が困難になった。

 こうした背景のもと、NEDOは、2014年度から「水素社会構築技術開発事業」の1テーマとして、仙台市水道局と協力し、茂庭浄水場をモデルに水素を利用して安定的なエネルギーを供給するための技術開発を進めている。