今回開発した手法の模式図。光合成によって重水素をミドリムシへ取り込ませてラマン顕微鏡で追跡する
今回開発した手法の模式図。光合成によって重水素をミドリムシへ取り込ませてラマン顕微鏡で追跡する
(出所:九州大学)
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(左)通常の顕微鏡でミドリムシを撮影した画像。(右)同じ視野をラマン顕微鏡で撮影した画像。重水素が取り込まれた細胞のみ検出された
(左)通常の顕微鏡でミドリムシを撮影した画像。(右)同じ視野をラマン顕微鏡で撮影した画像。重水素が取り込まれた細胞のみ検出された
(出所:九州大学)
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 九州大学は8月24日、重水を使って、藻類の一種であるミドリムシの光合成能力を調べる方法を開発したと発表した。現在開発中の超高速細胞分取装置と組み合わせることで、バイオ燃料を高効率に生産する「スーパーミドリムシ」を探し出せると期待される。

 ミドリムシは、光合成によって水と二酸化炭素から糖類を生産する。ストレス環境下では、この糖類をパラミロン顆粒として備蓄し、さらにバイオ燃料に利用できる油脂に転換する。

 研究グループは今回、光合成の原料となる水の代わりに、通常の水素よりも重い「重水素」を持つ水(重水)をミドリムシに取り込ませた。ラマン分光法を原理とした顕微鏡で観察し、重水素標識された個体を見分けることに成功した。

 同手法は、光合成能力の高いミドリムシを選別する方法への活用が期待される。光合成能力の高いミドリムシ個体を探し出せれば、再生可能エネルギーとしての実用化を促進できるとしている。

 今回の研究は、内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「セレンディピティの計画的創出による新価値創造」の支援を受けた。研究成果は、Wiley Online Libraryの「ChemBioChem」オンライン速報版として8月14日公開された。