米国のエネルギー大手Ameren社と重電大手のS&C Electric社は8月17日、イリノイ州シャンペーン(Champaign)で構築したマイクログリッドで系統網から切り離して電力供給する「アイランド・モード」の実証を行い、太陽光・風力発電、蓄電池からの放電だけで24時間の自立運転に成功したと発表した。

 このマイクログリッドは、4000~3万4500Vの高圧で運用が可能であり、世界でもまだわずかな事例の一つという(関連記事)。

 同マイクログリッドでは、太陽光と風力を合せて225kWの発電設備、250kW/500kWhの蓄電池システムを備える。今回の自立運転では、このうち50kW分だけを使用した。

 アイランド・モードの運転パターンは、例えば、8月3日の午前8時、SOC(充電状態)97%の蓄電池が放電を開始し、SOCが90%になった時点で太陽光と風力が発電を開始し、負荷側に電力を供給すると同時に蓄電池への充電を始める。

 このパターンが日中に継続され、蓄電池のSOCが 88%を下回ることはなかったという。人手を介さずにマイクログリッドが作動し、機器の調整を自動的に行いつつ、電力の安定した供給が行われたとしている(図)。

米Ameren Illinois社のマイクログリッドにおけるアイランド・モード試験運転の概要。黄色い折れ線が蓄電池のSOC、薄茶色が風力発電、水色が太陽光発電の出力をそれぞれ示す
米Ameren Illinois社のマイクログリッドにおけるアイランド・モード試験運転の概要。黄色い折れ線が蓄電池のSOC、薄茶色が風力発電、水色が太陽光発電の出力をそれぞれ示す
(出所: S&C Electric)
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 24時間にわたった実証運転の終了後、エンドユーザ側での停電などもまったく発生せずマイクログリッドは系統接続モードに復帰した。

 Ameren 社で運用・技術サービス担当のRon Pate上席副社長は、「世界でもまだわずかな事例しかない高圧動作型マイクログリッドで、系統接続モードからアイランド・モードへの切り替えを実証できた。マイクログリッドは机上の理論だけではなく、顧客に大きなメリットを提供できる」と述べている。

 一般にこの規模のマイクログリッドでは、大半の場合は負荷調整のために発電機を併用しなければならないことが多い。今回の試験でAmeren社のマイクログリッドは、日中に100%再生可能エネルギーで運用されたが、負荷の上限を超える電力はすべて蓄電池によって吸収できた。

 S&C Electric社で事業開発を担当するDavid Chiesaシニア・ディレクターは、「マイクログリッドは、電力網において当たり前のものになりつつある。今回の実証運転によって、マイクログリッドがさらに大きなインパクトをもたらす可能性を示している」と述べている。