アタッシュケースに収まる
アタッシュケースに収まる
(出所:産総研)
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開発した直流電流用クランプ型センサーの構造
開発した直流電流用クランプ型センサーの構造
(出所:産総研)
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測定誤差の評価例
測定誤差の評価例
(出所:産総研)
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 産業技術総合研究所(産総研)は7月28日、太陽光発電などで求められていた、直流電流を高精度に測定できる携帯型の電流計を開発したと発表した。

 産総研の物理計測標準研究部門(応用電気標準研究グループの堂前篤志主任研究員、量子電気標準研究グループの金子晋久研究グループ長)と、寺田電機製作所(東京都町田市)が共同で開発した。

 60Aまでの直流電流を、電気配線を切断せず、挟み込むだけで電流を測定できるクランプ型センサーを使い、精密に測定できる電流計で、アタッシュケースに収め、寸法が406×499×192mm、重さが約8.2kgとした。

 電気設備の開発や運用に欠かせない電流の計測において、計測する電気配線への着脱が容易な利点がある、クランプ型の電流センサーが広く使われている。

 しかし、クランプ型の電流センサーには、使用環境の影響を受け、計測値に誤差が生じてしまうため、測定精度の向上に限界があった。特に、直流の電流測定の際に、この課題が顕著となる。

 屋外に設置されている直流の電気設備の代表例が、太陽光発電システムとなる。太陽光パネルから接続箱、集電箱を経て、パワーコンディショナー(PCS)に入力されるまで、直流で構成されている。

 また、電気自動車(EV)の給電システム、燃料電池も屋外に設置される直流によるシステムである。屋内に設置されているものの、直流給電の採用で先行するデータセンターも、直流による大規模なシステムとなっている。

 一般的に、直流用のクランプ型電流センサーは、電流が流れることで、周囲に生じた磁界の大きさに応じた電気信号を出力するホール素子が広く応用されている。これによって、非接触で直流電流を測定できる仕組みとなっている。

 しかし、ホール素子には、磁界がない時に出力信号がゼロではなくなる、オフセットと呼ばれる誤差が生じる上、この誤差が変動する。加えて、検出部の磁化(着磁)による誤差も生じるため、高精度な直流電流の測定が難かしかった。

 そこで、クランプ型センサーを新たに開発するとともに、このセンサーに、着磁を検知して自動で消磁する機能や、ホール素子の出力のオフセットとその変動を検知し、補正する機能を付加した。測定精度は0.1%程度に高まり、従来に比べて約10倍に精度が向上した。

 さらに、こうした機能を担うモジュールを小型化し、持ち運び可能な電流計を実現した。また、省電力化することで、内部バッテリーにより最大4時間の駆動を可能にし、商用コンセントが利用できない車内や施工現場の環境でも使えるようにした。