採血なしに指先で光に触れるだけで血糖値を測定できる(左)。点線で囲まれた部分が、クラークエラーグリッド分析法において正確な測定であると認められる範囲(右)。(出所:量子科学技術研究開発機構)
採血なしに指先で光に触れるだけで血糖値を測定できる(左)。点線で囲まれた部分が、クラークエラーグリッド分析法において正確な測定であると認められる範囲(右)。(出所:量子科学技術研究開発機構)
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 量子科学技術研究開発機構(量研)は2017年8月18日、採血なしで血糖値を測れる技術の実用化を目指す企業、ライトタッチテクノロジーを同年7月5日に同機構のベンチャー第1号に認定したと発表した。レーザー技術に基づく非侵襲血糖値センサーの事業化を目指す。

 ライトタッチテクノロジーは2017年7月10日に設立され、同機構 量子ビーム科学研究部門関西光科学研究所量子生命科学研究部レーザー医療応用研究グループリーダーの山川考一氏が代表取締役社長に就任した。同氏らはかねて、高輝度中赤外レーザーを用いた非侵襲血糖値センサーの開発を進めてきた(関連記事)。新会社設立はこの技術の事業化を目指した文部科学省の「大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)」の成果を活用したものである。

 非侵襲血糖値センサーについてはこれまで、可視光や近赤外光などを用いた開発が20年以上にわたり行われてきた。ただし、たんぱく質や脂質など糖以外の血中成分や体温などの影響を受けやすいことから、臨床応用に必要な測定精度を得ることができていなかった。

 これに対し、中赤外領域では特定の物質に選択的に光エネルギーを吸収させられることから、グルコースの吸収を比較的容易に計測できるという。一方、セラミックヒーターなどの従来光源は中赤外領域での輝度が極端に低いため、血糖測定に必要な精度が得られなかった。そこで山川氏らは、固体レーザー技術と光パラメトリック発振技術を融合することで、手のひらサイズの高輝度中赤外レーザーを開発。一定条件の下、国際標準化機構(ISO)が定める測定精度を満たす非侵襲血糖測定技術を確立することに成功した。

 新会社では今後、被験者に糖尿病患者を含めた臨床研究を大学病院などで実施し、POC(proof of concept)の取得を目指す。医療機器メーカーなどとの協業を進め、治験および薬機法承認を経て、病院から一般家庭まで幅広く使える小型非侵襲血糖値センサーを事業化する計画という。