8月21日に米国で観測される皆既日食は、電力事業者や太陽光発電に関連する企業が気象観測データの収集や一般消費者に啓もう活動を行ううえで貴重な機会にもなりそうだ(関連記事1)。

 ミズーリ州のエネルギー事業者であるAmeren Missouri社は8月16日、セントルイス大学と共同で運用している気象予測システム「Quantum Weather」を用いて、日食が起きている間の気象観測データを同州内100カ所の観測ステーションから収集し、同大学の地球大気科学部に転送すると発表した。

 これらのデータは、温度や湿度、大気圧、風速と風向き、降雨などに対して日食が及ぼす影響を理解するうえで稀有なものになるという。Ameren Missouri社によると、「日食中の経路上でミズーリ州全体の気象観測データをリアルタイムで取得できるシステムは、同社のQuantum Weatherだけ」という。

 同社は平常時、Quantum Weatherを用いて荒天時の詳細な情報を取得し、停電後の復旧作業における効率改善などに役立てている。

 セントルイス大学は、Quantum Weatherシステムが収集するデータに加えて、気象観測気球も活用する(図1)。同大学は、米航空宇宙局(NASA)と国立科学財団(NSF)が支援する「Eclipse Ballooning Project」の一環として、日食の間に気象観測気球を大気圏の上層に飛ばし、ラジオゾンデ(無線機器付きの気象観測装置)によって風速、湿度、大気圧などのデータを測定する計画である。

図1● 日食に備えて気象観測気球のテストを行うセントルイス大学・地球大気科学部のBob Pasken教授らのグループ
図1● 日食に備えて気象観測気球のテストを行うセントルイス大学・地球大気科学部のBob Pasken教授らのグループ
(出所:Ameren Missouri)
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