ベルギーの研究機関であるimecらは8月8日、ペロブスカイトとシリコンのタンデム型太陽電池モジュール(面積4cm2)を改善し、変換効率23.9%を達成したと発表した(図)。セル(発電素子)に積層したモジュールを用い、この水準でシリコン単体の太陽電池セルの性能を上回ったのは、imecが初めてという。

ベルギーのimecが発表した、変換効率23.9%のペロブスカイト/Si太陽電池モジュール
ベルギーのimecが発表した、変換効率23.9%のペロブスカイト/Si太陽電池モジュール
(出所:imec)

 imecは2016年に初めて、Sollianceと共同開発した半透明のペロブスカイト・モジュールを発表している。4端子のタンデム構成でバックコンタクト(IBC)型の結晶シリコン太陽電池セル上に積層し、開口部面積4cm2のモジュールで変換効率は20.2%だった。Sollianceは、ドイツ、ベルギー、オランダのメーカーが参加している薄膜太陽電池の研究開発コンソーシアムである(関連記事1)(関連記事2)。

 Imecの薄膜太陽電池グループ・リーダーとSollianceのPVプログラム・マネージャーを務めるTom Aernouts氏は、「今回の成果では、2つの技術革新がカギとなった。1つ目は異なるペロブスカイト材料(CsFAPbIBr)を使用し、半透明ペロブスカイト・モジュールの安定性と変換効率を15.3%と大幅に改善できたこと。2つ目は、スタックの設計を最適化できたこと。反射防止材をモジュール上に、屈折率整合液材をペロブスカイト・モジュールとシリコン太陽電池セルの間に加え、光学的な損失を最小限に抑えた」と述べている。

 また、Aernouts氏によると「この大きさの整合面積であれば、製造技術が太陽電池産業にとって魅力的になる。参照例のために、4cm2のバックコンタクト結晶シリコンセル上に0.13 cm2と小さいペロブスカイト・セルを重ねたスタックも作成した。この構成では、ペロブスカイト層の特性がもっと良いため、小さい半透明ペロブスカイト・セルの変換効率は16.7%と、4cm2の大きなモジュールの効率を上回る。産業の観点からはあまり魅力的ではないが、この構造のスタックの変換効率は最高で25.3%になる」という。

 ペロブスカイト太陽電池は、太陽光の高吸収率、高変換効率や、低コストで製造が可能といった太陽電池に理想的な特性を多く持っているため、日本を含め世界各地で研究開発が活発に行われている(関連記事3)(関連記事4)。