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「エネ基本計画」の議論開始、「骨格は変えない」に異論も

原子力の位置づけ、輸入バイオマス増加への懸念も

  • 金子憲治=日経BP総研 クリーンテック研究所
  • 2017/08/11 23:24

 経済産業省は8月9日、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会を開催し、「エネルギー基本計画」の見直しに関する議論を始めた。「エネルギー基本計画」は3年ごとに見直すことになっており、前回は2014年に改訂され、今年が見直しの年になっている。

 経産省は、2014年の改訂を受け、2015年に長期エネルギー需給見通し小委員会の場で、「2030年のあるべき電源構成(ベストミックス)」を議論し、「再生可能エネルギーの比率22~24%」「原子力の比率22~20%」などの目標値を決めた経緯がある。

 前回の見直し後、固定価格買取制度(FIT)の進展によって、再生可能エネルギーの電源比率は15%(2016年度の推定)と順調に高まっている一方、原発の再稼働が進まないことから、「再エネの目標比率を30%まで高め、さらに推進策を強化して欲しい」(指定都市 自然エネルギー協議会・会長の門川大作京都市長)との要望も出ていた。

 ただ、9日の分科会では、議論の冒頭で世耕弘成・経産大臣が「今回の見直しでは、エネルギー政策の骨格を変える必要はない」との基本的な方向性を示した。経産省の事務局も、「2030年のベストミックス比率を変えるというより、まずはその達成に向けた課題を整理して、克服に向けた施策を議論していきたい」との姿勢を繰り返した。

 事務局の作成した資料では、再エネに関して、「FITから自立して主力電源に」との位置づけを示しつつ、高コスト構造とインフラ整備が課題とした。具体的には、「高コストの是正」「産業強化」「調整力の確保」「送電網の確保」の4点に整理した。

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エネルギー源ごとに課題を整理した
(出所:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 資料)

国内「再エネ産業」の劣勢に懸念

 「高コスト」に関しては、「2012年から2016年まで1kWh当たりのコストを見ると、ドイツでは太陽光が22円から9円に下がったなか、日本では40円から24円の低下にとどまっており、海外に比べるとかなり高い」ことが指摘された。

 加えて、「産業強化」の視点では、「企業の事業規模を世界トップと日本トップで比べると、太陽光パネルは5倍、風力設備は80倍、再エネ発電事業は5倍に達しており、再エネ産業における企業体力に大きな差が付いている」との問題意識を示した。経産省が、審議会の場で国内再エネ産業の競争力に関して懸念を示したのは異例で、エネルギー政策と共に産業政策を担っている立場として、シェアの低下する一方の国産再エネ設備に危機感を持っていることを伺わせる。

 また、「調整力と送電網の確保」に関しては、再エネの大量導入に伴い、「火力発電に代わる調整力として蓄電池や水素貯蔵などの革新に挑戦すべき」「送電網の運用改善とともに、蓄電池を組み合わせた分散システムへの投資も必要」との施策案が示された。

 事務局によるこうした説明の後、各委員が自由に意見を述べた。この中では、「前回から骨格を変えない」との基本方針に関し、異論も目立った。「原発をベース電源として残すならば、リプレイスの議論を早急に始めるべき」「前回の見直し以降、高速増殖炉もんじゅの廃炉が決まっており、これを踏まえた原子力政策の在り方を明確にすべき」「世界の有力企業は、再エネ100%を目指し始めており、いまの日本のベストミックス目標ではこうしたニーズに応えられない」といった意見があった。

 加えて、再エネ政策に関しては、「バイオマス発電でバブルの兆候があり、特に輸入バイオマスを活用したケースは、国産エネルギーの活用という本来の趣旨を逸脱しており問題」「バイオマス燃料を国産と輸入で差別することは、WTO(世界貿易機関)からの指摘を受ける可能性はあるものの、国産主体に推進していく手法を工夫すべき」など、輸入バイオマスによる発電所の増加を問題視する声が多かった。

 なお、経産省は、2030年のエネルギー政策を議論する「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会」とは別に、2050年のエネルギー構成のあり方をターゲットにした「情勢懇談会」を近々、開催することを明らかにした。

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再エネの課題はコスト高とインフラ整備
(出所:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 資料)