国内「再エネ産業」の劣勢に懸念

 「高コスト」に関しては、「2012年から2016年まで1kWh当たりのコストを見ると、ドイツでは太陽光が22円から9円に下がったなか、日本では40円から24円の低下にとどまっており、海外に比べるとかなり高い」ことが指摘された。

 加えて、「産業強化」の視点では、「企業の事業規模を世界トップと日本トップで比べると、太陽光パネルは5倍、風力設備は80倍、再エネ発電事業は5倍に達しており、再エネ産業における企業体力に大きな差が付いている」との問題意識を示した。経産省が、審議会の場で国内再エネ産業の競争力に関して懸念を示したのは異例で、エネルギー政策と共に産業政策を担っている立場として、シェアの低下する一方の国産再エネ設備に危機感を持っていることを伺わせる。

 また、「調整力と送電網の確保」に関しては、再エネの大量導入に伴い、「火力発電に代わる調整力として蓄電池や水素貯蔵などの革新に挑戦すべき」「送電網の運用改善とともに、蓄電池を組み合わせた分散システムへの投資も必要」との施策案が示された。

 事務局によるこうした説明の後、各委員が自由に意見を述べた。この中では、「前回から骨格を変えない」との基本方針に関し、異論も目立った。「原発をベース電源として残すならば、リプレイスの議論を早急に始めるべき」「前回の見直し以降、高速増殖炉もんじゅの廃炉が決まっており、これを踏まえた原子力政策の在り方を明確にすべき」「世界の有力企業は、再エネ100%を目指し始めており、いまの日本のベストミックス目標ではこうしたニーズに応えられない」といった意見があった。

 加えて、再エネ政策に関しては、「バイオマス発電でバブルの兆候があり、特に輸入バイオマスを活用したケースは、国産エネルギーの活用という本来の趣旨を逸脱しており問題」「バイオマス燃料を国産と輸入で差別することは、WTO(世界貿易機関)からの指摘を受ける可能性はあるものの、国産主体に推進していく手法を工夫すべき」など、輸入バイオマスによる発電所の増加を問題視する声が多かった。

 なお、経産省は、2030年のエネルギー政策を議論する「総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会」とは別に、2050年のエネルギー構成のあり方をターゲットにした「情勢懇談会」を近々、開催することを明らかにした。

再エネの課題はコスト高とインフラ整備
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再エネの課題はコスト高とインフラ整備
(出所:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 資料)