日立製作所、丸紅、みやぎ生活協同組合、宮城県富谷市の4者は2017年8月4日、太陽光発電システムで発電した電力から水電解装置で水素を製造し、エネルギーとして利活用するサプライチェーン構築に向けた実証を行うと発表した(日立製作所のニュースリリース丸紅のニュースリリースみやぎ生活協同組合のニュースリリース富谷市のニュースリリース)。環境省の「平成29年度地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択された実証事業で、2017年8月から実施し、成果を2019年度までにまとめる予定。

低炭素水素サプライチェーン実証の概要イメージ
低炭素水素サプライチェーン実証の概要イメージ
(図:4者共同のニュースリリースより)
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 太陽光などの再生可能エネルギーは、気象条件などにより発電量が変動するため、電力の安定供給に向けて余剰電力を水素に変換して貯蔵する技術が注目されている。また、水素はCO2を排出せず効率的に利活用できるため、地球温暖化対策に有効なエネルギーとして、水素サプライチェーンの構築が求められている。

 今回、みやぎ生協の物流センターにある既設の太陽光発電システムで発電した電気を水電解装置で水素に変換し、水素吸蔵合金カセットに貯蔵する。みやぎ生協の既存物流ネットワークを用いて、みやぎ生協組合員の家庭、みやぎ生協店舗、児童クラブに水素エネルギーの供給を行うサプライチェーンを構築する。輸送された水素吸蔵合金カセットを純水素燃料電池に取り付け、水素を取り出して電気や熱に再変換することで、エネルギーとして利活用できる。

 既存の物流ネットワークを利活用することで、低炭素・低コストで水素を輸送できる。また、各家庭の燃料電池に貯蔵された水素は、太陽光による発電電力が減少する夕方から夜間にかけて利用することを想定しており、エネルギーを効率的に利用できる。さらに、今回の地産地消型の水素需給体制サプライチェーンの実証結果は、全国展開が可能であり、民生向けの水素利用の拡大やCO2排出削減への貢献が期待される。

 日立は、取りまとめ企業としてシステム全体を設計し、水電解装置や燃料電池などの主要機器を調達し、需給バランスを保ちながら水素貯蔵・配送計画を行う全体運用を管理する。丸紅は、事業化の際の経済性などの課題を抽出し、課題解決に向けた施策を提言する。みやぎ生協は、水素サプライチェーンの実証運転を行う。富谷市は、実証場所を提供するとともに、水素サプライチェーンの普及・促進に向けた啓発活動、CO2を排出しない未来都市構想を検討する。

 富谷市では、宮城県が策定した「みやぎ水素エネルギー利活用推進ビジョン」に基づく水素社会構築を推進している。4者は今後、CO2を排出しない未来都市を目指し、富谷市で構築したサプライチェーンを宮城県内全域から東北地域や全国に向けて拡大を図る。