図1 Audi社のSUV「SQ7 TDI」のV型8気筒ディーゼルエンジン。排気量は4Lで左に電動過給機、右に可変ターボが2個見える。
図1 Audi社のSUV「SQ7 TDI」のV型8気筒ディーゼルエンジン。排気量は4Lで左に電動過給機、右に可変ターボが2個見える。
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図2 Mercedes-Benz社「Sクラス」用のガソリンエンジン「M256」
図2 Mercedes-Benz社「Sクラス」用のガソリンエンジン「M256」
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図3 三菱重工の電動過給機。モーターにフィンはあるが送風はせず、基本的に無冷却だ。右側はターボ。
図3 三菱重工の電動過給機。モーターにフィンはあるが送風はせず、基本的に無冷却だ。右側はターボ。
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 ドイツ勢が電動過給機を市場に投入し始めた。ターボチャージャーと同じ遠心型のコンプレッサーをモーターで直接回す。ターボの回転数が上がるまでの間、圧縮した空気をエンジンに送り込む。目的は応答性だ。

 載った車種はAudi社の「SQ7 TDI」とDaimler社のMercedes-Benz「Sクラス」(図1,2)。片やSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)、片や大型セダン。「そんな応答性いらんだろう」という車種の応答性を、「そんな応答性いらんだろう」というほど高める。金持ちのオモチャである。

 金持ちのオモチャが悪いとは言わない。まず金持ちのオモチャとして世に出し、高めの値付けをして開発投資を回収しながら大衆化に向かう。正しい常套手段だ。自動車だって初めはそうだった。それが人々の暮らしを支えるようになるのに100年かかった。電動過給機の場合、そんなに待てない。切実なニーズが目前に迫っているからだ。

 今、さまざまな低燃費エンジンの開発が進んでいる。超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)や大量EGR(排ガス再循環)、HCCI(予混合圧縮着火)、吸気量を大きく減らしたミラーサイクル。これらは、燃費は素晴らしいのだが、半面ダメなエンジンである。何しろ自然吸気の状態で排気量当たりのトルクが小さい。日経Automotive誌2017年9月号の解説記事「過給は可変か電動か」に詳細を記したが、排気量を増やすことやターボによる過給を強化するなどの対策を総動員する必要がある。