電動過給機は、応答性は高いが電力消費量が多いため、ターボの代わりにはならない。初めの数秒しか使わない。三菱重工はそれに徹して水冷をやめた。空冷に役立ちそうなフィンはあるが、送風していない(図3)。ほとんどの熱を、スクロールなどの部品の熱容量で吸収する。これでコストは下がり、モーターの径も小さくなる。

 もう一つはモーターの開発だ。BW社とHoneywell社、IHIは永久磁石式の同期モーター、Valeo社はSR(Switched Reluctance)モーターとした。ここまでは広く使われているモーターだ。三菱重工は手持ちのモーターでは満足しなかった。48V機用に磁束スイッチングモーター、12V機用にホモポーラー型モーターという新形式のモーター2種類を開発中だ。

 磁束スイッチングモーターはパワー半導体の素子が少なくて済むし、レアアース磁石でなくフェライト磁石が使える。ホモポーラー型モーターは汎用のマイコンが使える。どちらもコストを下げられる。

 三菱重工だけが、ポスト“金持ちのオモチャ”時代を見据えて電動過給機を開発しているように見える。この作戦が当たるかどうか、答えは5年後に出る。